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2023.08.25
【面会交流】間接強制が認められるケース・認められないケースとは?申し立ての費用についても解説

面会交流に応じない相手方に対しては間接強制が一定の効果を発揮します。「面会に応じない場合、1回あたり〇〇万円の制裁金を課す」などと命じて、自発的な義務の履行を促すことができます。

ただ、間接強制は裁判所を介して利用する制度であり、常に申立てが認められるわけではありません。間接強制が認められるケースと認められないケースがありますので、ここでその傾向を掴んでおきましょう。


間接強制が認められるケース


間接強制とは「特定の義務を果たさない債務者に対し間接強制金を課して、心理的圧迫を加えることで自発的な履行を促すこと」を指します。

金銭の支払い義務であれば、強制執行により財産を差し押さえて義務を履行させることができます。しかし、義務の内容が面会交流のように強制執行が難しいタイプもあります。そのような場合に間接強制は利用されます。

例えば面会交流についての取り決めを行っていたにもかかわらず、一方の親が面会交流を拒絶するケースがあります。このとき他方の親が裁判所に間接強制の申立てを行ってこれが認められれば、裁判所が「面会交流を実施しない場合、1回につき5万円を支払うこと」などと命令を下すことができます。


【面会交流の内容が具体的に定まっている】

義務が存在していても、常に間接強制の申立てが受け入れられ、裁判所が命令を出してくれるとは限りません。面会交流に関する間接強制が認められやすいのは「面会交流の実施方法や内容が具体的に定められている場合」です。

そこで、次のような事項を事前に定めておくことが大事です。


・頻度

・日時

・1回あたりの時間

・子どもの引き渡し方法

・代替日の決め方

・面会場所

・立会の有無

 

間接強制が認められないケース


間接強制を申立てても認められにくいケースとして「履行すべき内容が不明瞭な場合」や「子どもに悪影響がおよぶおそれがある場合」が挙げられます。


【履行すべき内容が不明瞭】

面会交流の実施方法等が具体的に定められていると間接強制が認められやすいと説明しましたが、その反対に、履行内容が詳細でないときは認められにくい傾向にあります。

面会交流実施の程度や時間帯、長さ、内容、方法については詳細に決められていなければなりません。「1月に2回、日曜日に実施する」「1月に1回面会交流を実施するものとし、日時や場所、時間については都度の協議により決める」といった程度しか定められていない場合、間接強制は認められにくいです。


【子どもに悪影響がおよぶおそれがある】

面会交流は、子どもと別居する親のために実施するものではありません。子どもの健全な成長のために実施するものです。そのため子どもの利益にならないにも関わらず、親の「子どもに会いたい」という気持ちだけでその権利を行使できるわけではありません。

しかしながら、子ども自身の拒絶反応が絶対的な判断材料になり、面会交流が否定されるわけでもありません。特に子どもの年齢が幼い場合、子ども自身が拒絶をしていても当然に間接強制を妨げる理由にはならないのです。

その一方で、15歳の高校生が面会交流を断っているような場合は子ども自身の意思も反映されやすいです。成人に近い子どもが拒絶しているときは、間接強制も認められにくくなります。

また、子どもの引き渡しに関する事例ですが、比較的幼い子どもの拒絶反応を理由に間接強制が認められなかったケースもあります(最高裁平31.4.26決定)。

この事例は、子どもと別居していた親が子どもを引き渡す旨の裁判所の審判に基づき、間接強制の申立てをしたというものです。審判に基づいて実施したのですが、「権利の濫用」であるとして間接強制は認められませんでした。以前、引き渡しに際して子ども自身が強く拒絶し、呼吸困難に陥るほどであったという背景があったためです。

そのため、審判により権限が認められている場合であっても、常に間接強制が認容されるとは言い切れない点に注意が必要です。


間接強制の申立てにかかる費用


間接強制は裁判所を介して実行するものです。そこで申立て費用を裁判所に支払う必要があります。裁判所が提示している費用は「収入印紙2,000円」と「連絡用の郵便切手代」です。郵便切手代の具体的金額に関しては、申立て先となる裁判所で確認する必要があります。

申立てをするには、この費用に加え、「申立書」「執行力を持つ債務名義の正本」「債務名義の正本送達証明書」を準備しないといけません。執行力のある債務名義とは、調停調書や審判書、判決書のことです。

費用と必要書類を準備の上、調停・審判・判決を下した家庭裁判所に対して申立てを行いましょう。その後裁判所は面会交流についての義務者に対して、審尋という手続により意見を聴取し、間接強制を認めるべきかどうかの判断を下します。

面会交流の申立てが認容されれば、「面会交流に応じない場合、1回につき〇万円を支払いなさい」といった命令が言い渡されます。

なお、間接強制は面会交流を強制的に実現する手続ではありません。結局のところ心理的なプレッシャーを加えるに過ぎず、相手方がこれに応じてくれない可能性もあります。そのため間接強制の申立てだけでなく、弁護士に相談してその他の対策も講ずることが大切です。

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2023.07.25
不動産相続でよくあるトラブルと紛争を防ぐためのポイントを解説

遺産相続をめぐって相続人やその他関係者と揉めることがあります。特に不動産は価額が大きな財産ですし、相続による取得やその後の維持に関して手間や費用も発生します。

さまざまな要因によりトラブルが起こり、相続をきっかけに人間関係の悪化を招くおそれもあります。

この問題を防ぐためにはどうすればよいのでしょうか。当記事では不動産相続においてよくあるトラブルを紹介し、各トラブルへの対策のポイントについて解説していきます。


トラブル①:不動産の取り合い


遺産の分割方法は、基本的に相続人の間での話し合いにより定めます。


取得割合については民法で法定相続分が規定されており、配偶者と子どもが相続人になる場合はそれぞれ「1/2」が取り分となります。

配偶者と被相続人の親が相続人になるときは、配偶者が「2/3」、親が「1/3」。

配偶者と兄弟姉妹が相続人になるときは、配偶者が「3/4」、兄弟姉妹が「1/4」を取得することになります。

※配偶者以外の同順位の相続人が複数いるときは、その取得割合を人数で案分する。

ただし遺産分割協議で話し合うことで法定相続分と異なる割合で取得することもできますし、各々具体的に何を取得するのかは当事者の話し合いで決める必要があります。

現金であれば均等に分けることができるところ、不動産は分けるのが容易ではありません。そこで取り合いになりトラブルが生じることもあります。


【対策のポイント】

不動産の取り合いが起こりそうな場合、あるいはその危険性が明らかでない場合でも、被相続人が生前に「遺言書の作成」をしておくことが1つの対策になります。

遺言書に「甲土地は、配偶者Aに譲る」などと記載しておくことで取得者を定めることができ、取り合いによるトラブルを防ぐことができます。

このときの注意点として大きく2つ挙げることができます。

1つは“遺言書を作成しても不満が残る可能性があるため、事前に話し合って、納得を得ておく”ということです。

「自分がもらえるかもしれない」との余計な期待を抱かせないよう、事前に「この土地は配偶者にあげようと考えている」という旨を伝えておけば、相続開始後の人間関係の悪化なども防ぎやすくなります。

もう1つの注意点は、“遺言書を適式に作成すること”です。

遺言書は法令に準拠して作成しないと、法的な拘束力を働かせることができません。遺言内容に不満を持つ人物が無効の主張をしてくるリスクがありますので、弁護士などの専門家にサポートをしてもらい有効な遺言書を作成しましょう。

先に不動産を譲渡することに問題がなければ、生前贈与という手段も検討すると良いでしょう。


トラブル②:共有により不動産活用に弊害が生じる


不動産は、誰か1人の所有下に置く必要はありません。

複数の相続人で“共有”することも可能です。

ただ、共有をすべき特段の事情がないのであれば、これは避けるべきです。 

共有することになった不動産は、その後各人自由な処分ができなくなり、扱いにくいです。

1人が「この建物を売りたい」と考えても、所有者全員の合意がなければ売却はできません。賃貸に出すのも容易ではなくなります。


【対策のポイント】

共有によるトラブルを避けるためには、遺産に含まれる不動産を放置しないことがまず必要です。遺産は自動的に相続人のものとなり、別途分割方法を定めないと共有状態になってしまいます。

そこで第一に、「共有とすべきかどうか」の検討を始めます。

共有をする必要がある場合は、共有のリスクを理解した上で、意見の合う者とのみ共有するように留意しましょう。

相続人が配偶者と子ども1人だけである場合など、近い将来単独所有になることが予想されるときは大きな問題は起こりにくいです。この場合、配偶者が亡くなると子どもが単独で所有することになります。

共有すべき積極的な理由がないときは、相続人の誰か1人の単独所有とする方向性で話を進めると良いです。

単独所有にしたからといって、その所有者以外が損をするわけではありません。不動産以外の財産を得ることでバランスを取れば問題ありません。


トラブル③:分割方法についての意見が合わない


不動産を誰が所有するのか、どのように遺産を分割するのか、といったことにつき話がまとまらないこともあるでしょう。

特に不動産が遺産総額の大半を占めているような場合だと、バランス良く相続人間で遺産分割することが難しくなってしまいます。


【対策のポイント】

遺産の分割方法を把握し、経済的利益のバランスが取れるように分割することが重要です。 

不動産がある場合の遺産分割方法は、大別して4つです。

1つは上述の「共有」。その他の分割方法として「現物分割」「換価分割」「代償分割」が挙げられます。


・現物分割

不動産をそのまま相続する方法。現金と預貯金、有価証券、不動産がある場合、1人が不動産、もう1人がその他を取得する、といった分割方法。

メリット:シンプルで明瞭。手続も簡単。

デメリット:均等な価額で分割することが難しい。


・換価分割

不動産を売却して得た現金を分割する方法。

メリット:平等に遺産分割しやすい

デメリット:不動産を残すことができない


・代償分割

不動産を相続した人物が、他の相続人に金銭を支払う方法。

メリット:平等に遺産分割しやすい。不動産を残すことができる。

デメリット:不動産取得者にかかる現金の負担が大きい


不動産が唯一の遺産であった場合、平等な遺産分割とするには、不動産を共有するほか「換価分割」または「代償分割」という方法があります。

その不動産をそのまま残す必要がないのであれば、換価分割により現金化すれば容易に平等な分割が実現されます。ただし売却できるまでに時間がかかってしまいますし、自宅として使っている場合にはこの選択肢を取ることはできないでしょう。

そこで「代償分割」も検討します。不動産を取得する方に十分な現金がある場合、他の相続人に対して代償金を支払うことで問題を解決できます。しかし場合によっては数百万円もの大金を現金として渡さないといけなくなるため、常に選択できる手段でもありません。


トラブル④:取得や維持に大きなコストが発生する


遺産分割の方法や不動産の取得者につき争いがなくても、その取得や維持に関するトラブルが起こることがあります。

まず、相続するときに相続税が課税されます。不動産に限った話ではありませんが、現金を相続した方ならそのまま相続財産の一部を相続税として納付できるところ、不動産を取得した方はその他の財産から納付額を捻出しないといけません。

不動産の価値が非常に大きい場合、相続人がもともと持っていた現金等から数百万円もの税金を納めないといけなくなり、税負担の割合が大きくなってしまいます。

その後不動産を維持し続けるのにも、固定資産税がかかってきます。メンテナンスなど、管理等にも費用がかかります。


【対策のポイント】

税金等のコストが問題となりそうな場合、無理に不動産を残す必要がないのなら、「被相続人が事前に売却しておく」のも1つの手です。 

不動産を残す場合でも、「遺産に対する現金等の割合を大きくしておく」ことで対処可能です。

現金のほか、現金化が容易な財産が多く残っていれば、不動産取得者がその財産から税金等を負担することができます。


不動産相続のトラブルを防ぐためには事前の対策が重要


不動産相続に伴い大きなトラブルが発生する可能性があります。

相続人同士で話し合い、上手く協議がまとまることもありますが、決着までに時間がかかったり、人間関係が悪くなったりする危険性があります。

そのため不動産があるときの相続では特に、専門家に相談することをおすすめします。

不動産を売却したり賃貸に出したり、評価額を知りたいときなどは、不動産会社など不動産そのものを専門とする業者・専門家を利用すると良いでしょう。

不動産相続に伴う相続税や固定資産税など、税制について詳しく知りたいという方は税理士を利用します。節税対策、特例や控除制度の利用などについてもアドバイスがもらえるでしょう。

その他相続手続全般のサポート、相続人間の揉め事への対処やその他関係者との交渉を求めるなら弁護士への相談が適しています。ここで紹介した一般的な対策のほか、個別の事情に合った最適な対策案を知ることができます。

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2023.07.25
遺言執行とは?~遺言執行者の役割と仕事内容、選任のメリット・デメリットについて~

遺言書を作成すれば、遺産を誰にどのように渡すのかを指定することができます。そしてその実効性を高め、効率的な遺贈手続を実現する方法に「遺言執行者の選任」があります。

遺言執行者を選任するとどうなるのか、具体的にどのような仕事をしてくれるのでしょうか。

この記事ではまず「遺言の執行とは何か」について説明した後、遺言執行者の役割、選任することのメリット・デメリットについても解説していきます。


遺言執行とは


遺言執行とは、遺言者が亡くなった後、作成された遺言書の内容に沿って遺贈や遺産分割などの手続を行うことを指します。

遺言の執行は相続人などが行うこともできますが、遺言の執行を仕事とする人物として「遺言執行者」を定めることもできます。


遺言執行者の仕事内容


遺言執行者に関しては民法に規定が置かれていますが、一つひとつの仕事内容が事細かに法定されているわけではありません。

例えば遺言執行者の権利義務として、民法第1012条第1項に「遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」と定められています。抽象的に、遺言内容の実現のために必要な広範な権利および義務が与えられていることがわかります。

その上で続く第2項にて、「遺言執行者がいるとき、遺贈の履行は遺言執行者のみができる」とも規定されており、その他相続人等による遺言の執行権限を排斥しています。

(引用:e-Gov法令検索 民法


【遺言内容の相続人への通知】

遺言執行者がしないといけない具体的な行為・仕事を挙げていきます。

まずは「遺言内容を相続人に通知する」ことが必要です。


 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。

 2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。

引用:e-Gov法令検索 民法第1007条


遺言執行者としての指定を受け、それを受け入れたなら、すぐに任務遂行に取り組まないといけません。そして任務の開始をしたなら、遺言書に記載されている内容を相続人に通知すべきことが民法で法定されています。

相続人としては、遺言内容を知らされないまま遺言執行者と名乗る人物が遺産に着手しだしたのでは不安に思うことでしょう。そこで通常は、“遺言執行者として指定されたことの知らせ”および“遺言書の写しの送付”を行います。


【遺産の調査と現状把握】

遺言執行者は、遺贈などを行うことになりますが、そのためには遺産の調査をしなければなりません。「特定遺贈」として遺贈する財産が具体的に特定されていることもあれば、「包括遺贈」として割合で指定されていることもあるでしょう。

いずれにしろ、遺贈の対象となる財産の存在が把握できなければなりません。

そこで遺産を調査し、現状の把握に努めます。

不動産や現金、預貯金、動産などを探し出し、その価額についても評価していきます。必要に応じて専門家の力も借りることになるでしょう。


【財産目録の作成と相続人への交付】

民法の規定に従い、遺産の調査後は、財産目録を作成します。


 遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。

引用:e-Gov法令検索 民法第1011条第1項


どんな財産が残っているのかがわかるように情報を記載し、評価額についても記載します。遺言執行者の選任がない場合でも、相続人が遺産を調査したときは財産目録を作成することが推奨されます。

他方、遺言執行者に関してはこの作成が法的義務であることに留意しなければなりません。財産目録の相続人への交付についても義務です。


【債務の弁済】

遺産に含まれる財産はプラスの価値を持つものばかりとは限りません。借金など、債務が残っていることもあるでしょう。

そこで、遺言執行者が債務の弁済などの手続を行うこともあります。

「清算型遺贈」と表現されることもあり、遺産の全部または一部を売却し、債務を弁済。その上で残った金銭を相続・遺贈するといった遺言のことを指します。

清算型遺贈が利用されるのは、「債務超過には至らないものの多額の債務が残っているケース」などです。債務の弁済に関して相続人に余計な手間をかけさせないよう、遺言執行者に任せます。


【遺言内容の実行】

遺産の調査や債務の清算なども済めば、遺言内容に従い、所定の行為を実行していきます。

遺贈を行う場合、財産を特定の人物に渡していきます。

対象物が不動産である場合には、法務局に申請をして登記の移転なども手続も行い、預貯金なども、払戻しなどの手続をして、受遺者に引き渡します。

遺言内容は、財産の移転ばかりとは限りません。

例えば子に対する「認知」も遺言により行うことができます。

「認知」とは婚姻関係になかった男女から生まれた子どもに対して、法的に自分の子どもであることを認める法律行為を意味します。その際の手続を遺言執行者が行うことになります。

また、推定相続人の「廃除」も遺言により行うことができます。

「廃除」とは相続人になる予定の人物から相続権を奪う行為のことです。推定相続人から虐待を受けていたり、重大な侮辱を受けていたりしたときは、そのことを理由に廃除をすることが可能です。ただしその意思表示をするだけでは不十分で、家庭裁判所で所定の手続を行わなければなりません。その作業を遺言執行者が担います。


遺言執行者を選任するメリット


遺言執行者を選任することには、次の通りいくつかのメリットがあります。


・遺言者の希望を叶えられる

 遺言執行者を通じて、遺言者が残した最後の意思を現実に反映させることがでます。遺言執行者がいなくても実現させることは可能ですが、遺言執行者がいることでその実効性を高めることができます。

・遺贈手続が効率的に進められる

 遺言執行者が遺産の調査から管理、分割、移転などにかかる作業を一手に引き受けることで、効率化な遺言執行が期待できます。

・相続人間のトラブルが防ぎやすい

 相続人という遺産に直接の利害関係を持つ人物が携わるより、遺言執行者が手続を行ったほうが、相続人同士の争いやトラブルも防ぎやすいです。また、公平な遺言執行が期待できます。

 

遺言執行者を選任するデメリット


遺言執行者を選任することには前項に挙げた種々のメリットが得られる反面、遺言執行者に対する報酬が発生するというデメリットも生じます。

遺産の一定割合が報酬として設定されることがあり、その分受遺者や相続人の取得分が減ることになります。

また、遺言執行者が遺言の執行を担うことで相続人同士が揉めるのは防ぎやすくなりますが、遺言執行者と相続人の間でトラブルが生じる可能性もあります。特に遺言執行者として選任された人物が相続人から信頼されていないと、「不正に遺産に手をかけていないだろうか」などと疑いをかけられるリスクがあります。


遺言執行者の選び方に注意


遺言執行者を選任しておけば遺贈などの遺言執行の実効性が高まり、遺言者の意思を実現しやすくなります。

ただ、相続人から不信感を持たれている人物、その他遺産に対して何らの利害関係を持つ人物が選ばれていると、遺言執行者がトラブルの原因になってしまいます。

そこで推奨されるのが、弁護士等の専門家を遺言執行者として指定することです。中立な立場ですし、適切な遺言執行が期待できます。また、相続に関してのアドバイスを受けることができるなどの利点もあります。

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2023.06.07
遺留分とは?相続人が知っておきたい遺留分の計算と請求の方法、注意点について

相続開始により相続人となった方でも、亡くなった方の財産が手に入るとは限りません。負債を差し引いた後の資産が残っていないケースではもちろん、遺言書により「相続人以外の方に財産を渡す」といった指定をされているケースもあるからです。

しかしそのような場合でも「遺留分」という概念が法律上定められており、一定割合の財産に限り回収することが可能です。

遺留分とは具体的に何なのか、いくらの財産を回収できるのか。その方法や遺留分制度に関する注意点をここでまとめます。


遺留分とは最低限留保される相続財産のこと


遺留分は、一定の相続人に認められる、最低限留保される相続財産のことです。

本来相続財産は亡くなった方、つまり被相続人が好き勝手に処分できるはずのものです。そのため遺言書を使ってどのように処分をしようが、誰に譲渡しようが自由です。

しかし被相続人の財産を頼りに生活していた家族がいる可能性もあります。その場合まで限度なく自由な処分を許してしまうと、残された家族がその後の生活に困ってしまいます。

そこで遺留分として認められる相続財産の一定割合は、遺言書の内容に反してでも回収することができるものとして法定されています。


遺留分が認められる相続人


遺留分はすべての相続人に認められるわけではありません。

遺留分を確保できるのは、被相続人の「配偶者」「子ども」「親」などです。

子どもを代襲相続する場合「孫」にも遺留分は引き継がれます。

一方、被相続人の「兄弟姉妹」には遺留分は認められません。

そのため兄弟姉妹を代襲相続する「甥」や「姪」にも遺留分は認められません。


相続財産に対する遺留分の割合


各人の遺留分を計算するには、まず「総体的遺留分割合」を把握する必要があります。

総体的遺留分割合とは、相続財産に対する遺留分全体の割合を意味します。


そして総体的遺留分割合は、次のとおり民法で定められています。


 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。

 一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一

 二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一


 引用:e-Gov法令検索 民法第1042条第1項


つまり、

①親だけが相続人となるときの総体的遺留分割合は相続財産の1/3で、

②それ以外の配偶者や子どもなどが相続人となるときの総体的遺留分割合は1/2、

ということになります。

①は、直系尊属“のみ”が相続人であるときの割合ですので、配偶者と親が相続人になるときは②の割合が適用されます。

続いて各人の遺留分割合についてですが、こちらは「個別的遺留分割合」とも呼ばれます。

計算は簡単で、上の総体的遺留分割合に各相続人の法定相続分を掛け算するだけです。


遺留分の具体的な計算例


配偶者と2人の子どもが相続人となる場合、総体的遺留分割合は1/2です。

そして配偶者の法定相続分は1/2ですので、以下の計算式に従いこのときの配偶者の個別的遺留分割合は導き出されます。

1/2(法定相続分)×1/2(総体的遺留分割合)=1/4(個別的遺留分割合)

子ども全体の法定相続分は1/2であり、これを子どもの人数で分け合うため、子ども1人あたりの法定相続分は1/4です。

つまり次の計算式に従い各人の割合が導き出されます。

1/4(法定相続分)×1/2(総体的遺留分割合)=1/8(個別的遺留分割合)

仮に遺産総額が1,000万円であるとすれば、配偶者にはその1/4である250万円が遺留分として認められます。

子どもについては1/8にあたる125万円が遺留分として認められます。


遺留分を確保するには「遺留分侵害額請求」が必要


遺留分が問題となるのは、遺留分に満たない財産しか取得できなかった場合です。また、自動的に遺留分が確保されるわけではなく、財産を譲り受けた人物に対して請求をしないといけません。

この請求のことを「遺留分侵害額請求」と呼びます。


【遺留分の侵害とは】

上の例で考えてみましょう。遺産総額は1,000万円で、相続人は配偶者と2人の子どもです。

この場合において被相続人が遺言書で「友人Aにすべての財産を与える」といった記載を残していた場合、その財産は友人Aにすべて渡ります。

しかし相続人らには遺留分があります。

配偶者は250万円、子どもは125万円の遺留分を持つところ、一切の遺留分を確保できていません。そこでこの状態を「遺留分の侵害を受けている」と表現します。

次に、遺言書で「友人Aに600万円分の財産を与える」と記載があったとしましょう。法定相続分に従って相続人が遺産分割をしたなら、配偶者は200万円、子どもは100万円を取得できます。

しかしそれぞれ遺留分の侵害を受けている状態です。

そこで配偶者は「250万円-200万円」の50万円につき、遺留分侵害額請求ができます。

子どもは「125万円-100万円」の25万円につき、遺留分侵害額請求ができます。


【遺留分侵害額請求の流れ】

遺留分侵害額請求をするのに特別な手続は必要ありません。

受遺者と話し合い、「遺留分侵害額請求をする」旨の意思表示をすればその権利を行使したことになります。

ただ、相手方が納得して支払いに応じてくれない可能性もあります。

そんなときは「調停」へと進みます。家庭裁判所で遺留分侵害額の請求調停を申し立てます。調停で和解をするにも双方の同意が必要ですが、調停委員が間に入って調整を行ってくれるため、多くの場合はここで解決できます。

調停でも解決できない場合は、最終手段として訴訟の提起を行います。

裁判官に判断をしてもらうのです。自身に遺留分があることを立証するなどして、相手方に支払い命令を下してもらえるように主張します。訴訟になると一般の方が対応するのは難しくなるため、通常は弁護士に依頼します。


遺留分に関して相続人が注意しておきたいこと


遺留分に関して、相続人となる方が注意しておきたいルールがいくつかあります。ご自身の権利を守るためにも押さえておきましょう。


【遺留分侵害額請求権は1年の時効で消滅することがある】

注意点の1つは、権利の消滅についてです。

遺留分侵害額請求権に限らず、法律上認められる権利でも一定期間行使しなければ消滅してしまいます。ただしその消滅するまでの期間には違いがあり、同請求権に関しては次の通り規定が置かれています。


 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

 引用:e-Gov法令検索 民法第1048条


要は、遺留分の侵害があることを認識してから“1年以内”には請求をしないと、その権利がなくなってしまうということです。

さらに、遺留分の侵害があることを認識しないまま期間が過ぎても、相続開始から“10年”が経過すると同様に権利がなくなってしまいます。

そのため遺留分の侵害を知ったのが相続開始後9年半の時点であった場合、請求権を行使できるのは残り半年間ということになります。


【遺留分の放棄は撤回ができない】

遺留分は放棄することができます。

相続開始前に「遺留分を放棄します」との申出を家庭裁判所に行い、許可が下りたときには、その効力が生じて遺留分の請求を後で行うことはできなくなります。

推定相続人にとって遺留分の放棄は行う意味がないようにも思えますが、利点もあります。

1つは生前の放棄による「代償の受け取り」です。

生前の放棄が許可されるには、被相続人となる人物から代償として支払いがなされていることが求められます。法定されているルールではなく、絶対的な条件ではない点に留意しないといけませんが、このような運用がされているケースが多いです。

生前の代償をしてもらえることで、本来相続開始後に受け取るはずの財産を先取りすることができるのです。

もう1つは「受遺者等とのトラブルの防止」です。

遺留分をめぐって相続開始後に揉める可能性がありますが、代償を受け取り、遺留分の放棄をしておけば、このトラブルは回避することができます。


こうした利点もあり、実際、毎年数百件もの遺留分放棄がなされています。


・781件(令和3年)

・778件(令和2年)

・911件(令和元年)

出典:司法統計「令和3年 司法統計年報(家事編)」 


ただし、後から「やっぱり遺留分の放棄はなかったことにしたい」と考えても取り返しはつきません。原則として遺留分の放棄の撤回はできません。

例外的に認められるケースもありますが、撤回できることを期待して行うべきではなく、今後のことをよく考えて決断することが大事です。


【他の相続人の遺留分放棄は影響しない】

自分以外の相続人が遺留分の放棄をしたとしましょう。この場合でも自身の遺留分が増えるわけではありません。

「相続放棄」をしたのであれば、相続人としての立場そのものを捨てたことになり、その他の相続人の法定相続分も増えることになります。

しかし遺留分の放棄は対外的な影響力を持ちません。

そのため計算を間違えて個別的遺留分を算出し、受遺者等に請求をしないように気を付けないといけません。

 

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2023.06.07
面会交流を始めるまでの流れ~夫婦間の協議・調停・審判の手順~

離婚後、親権者となった親は子どもを監護することになり、子どもと一緒に生活します。一方、非親権者となった親は面会交流を通して子どもとの時間を過ごすことになります。

面会交流は子どもの成長、子どもの福祉のために重要です。そのため非親権者が面会交流を求めたときは、実施する方向でその方法等を決めていくことになります。

面会交流を始める方法にはいくつかパターンがあり、以下に示す流れに沿って確定させることになります。


面会交流は夫婦間の「協議」が基本


面会交流に関する取り決めは、離婚協議の際に同時に行うのが通常です。

ただ、親権者の定めは必須とされるのに対し、面会交流についてのルールを定めることが離婚の要件とはされていません。そのため面会交流について夫婦間で“協議をしないといけない”ということではありません。離婚後に話し合って決めることも可能です。

しかしながら、離婚後の話し合いがスムーズに進むとは限りませんし、できるだけ離婚前にしっかりと協議しておくことが望ましいです。

協議の進め方や決め方についての規制もありません。夫婦間で自由に話し合って決めれば良いのです。


【面会交流に関して話し合うべき事項】

自由に面会交流について話し合えば良いのですが、基本的には以下の事項を決めていくことになります。離婚後のトラブルを防ぐためにも次の基本事項は押さえておきましょう。


①面会交流を実施する日時、頻度

・「第〇日曜の10時から12時まで」と、面会交流を実施する日時を明確に定める

・具体的に定めることで面会交流の実行性が高まる

・具体的に決めるのが難しい場合、「月に2回」「3ヶ月に1回」などと実施頻度を指定しても良い


②面会交流1回あたりの時間

・1回の面会交流で何時間一緒に過ごすのかを定める

・午前中だけ、午後だけ、あるいは1日中、可能なら具体的な時間帯を指定して定める

・子どもの年齢なども考慮して検討する必要がある


③面会交流の場所

・そこで別居親と子どもが過ごすのかを定める

・別居親の自宅、公園、その他公共の場所、子どもの年齢も考慮して決めることが大事


④子どもの引渡し方法

・子どもが1人で出歩けるのかどうかによっても異なる

・子どもが1人で待ち合わせ場所に行けない場合は、どうやって連れていくのかも考えておく

・両親の仲が悪い場合、FPIC(公益社団法人家庭問題情報センター)などの面会交流支援事業を行っている団体に相談し、付き添いを頼むのも検討する


⑤面会以外の交流方法

・直接面会するのが難しい場合に備え、他の手段も検討する

・会えない事情があるときはビデオ通話により交流をする、など

・互いの住まいが遠く毎回長距離を移動するのが大変な場合には、直接面会する方法とビデオ通話を交互に行うことを基本とするやり方もある


【面会交流に関するルールを書面にまとめる】

上に挙げた事項などを話し合って決めた後は、その内容を書面にまとめていきましょう。

面会交流について約束をしたことの証拠を残すためです。

より安全に書面化するには、“弁護士に書面を作成してもらう”ことと、“公正証書として書面作成する”方法があります。

弁護士に依頼することで、確かにその人物が同意したという真正性を確保しやすくなります。さらに、公正証書にすると原本が公証役場に保管されるため、改ざんや紛失などのリスクもなくすことができます。

厚生労働省の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」で、母子世帯の面会交流の取り決め状況のデータが示されています。

内容を確認してみると、面会交流に関する取り決めを行った世帯のうち、約7割が「文書あり」、約3割が「文書なし」であることがわかります。また文書を作成した世帯のうち5割弱が「判決、調停、審判などの裁判所における取決め、強制執行認諾条項付きの公正証書」による文書であることも示されています。


夫婦間で決められないなら「面会交流調停」


「夫婦間の仲が悪く話し合いが進められない」「納得できない事項がある」という場合には面会交流調停の申立を検討します。

調停でも最終的な結論を出すには当事者間の同意に基づかないといけません。しかし調停を利用した話し合いでは、両親のほかに調停委員も参加します。専門家の意見も取り入れつつ話が進められ、また、対面しない方法で意見のすり合わせができるなど、落ち着いた話合いが行いやすくなるというメリットもあります。


【家庭裁判所への申立が必要】

調停を行うには、家庭裁判所に対して申立を行わなければなりません。

申立先は、相手方の住所にある家庭裁判所(または合意で定めた家庭裁判所があるならその裁判所)です。

連絡用の郵便切手代と、子ども1人あたり収入印紙1,200円を申立費用として納める必要があります。

その他準備すべき書類として、調停についての「申立書」とその写しを1通、さらに子どもの戸籍謄本(全部事項証明書)が必要です。


【数ヶ月以上の期間をかけて調停成立を目指す】

調停の場合、問題が解決するまでに数ヶ月を要することが多いです。

月に1回ほどの頻度で開かれる調停を、3,4回は繰り返すケースが多いからです。申立をしてから初回の調停期日までも1,2ヶ月を要します。対立が激しい場合にはより長期間かかってしまうでしょう。

なお、調停の期日では父母がそれぞれ別の部屋に待機し、交代に調停委員と話すこともあります。特に対面により一方に危険が及ぶ場合や萎縮してしまう場合などには、こういった配慮がなされます。


最終的には「審判手続」で裁判官が判断する


調停でも決着がつかない場合、最終的に審判手続に移行し、裁判官による判断で面会交流に関する事項が決まります。

別途申立の手続を行う必要はなく、調停が不成立になれば自動的に手続が移行します。

なお、無理に調停を先に行う必要はなく、調停での解決が到底できないと思われる場合にはいきなり審判手続を申し立てることも可能です。


【不服がある場合は高等裁判所で審理を行う】

審判手続の終結に当事者の合意は不要ですが、審理の結果に不服がある場合、“審判結果の告知を受けた日から2週間以内”であれば再度の審理を求めることができます。これを「即時抗告」といいます。

即時抗告があると、続く審理は高等裁判所で行われることになります。ただし常に即時抗告が受け入れられるわけではなく、棄却されることもありますので要注意です。

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2023.05.02
遺言書の保管方法とは?遺言書作成後のリスクや自筆証書遺言保管制度について

遺言書を作成した後は、相続が開始されるまで大事に遺言書を保管していなければなりません。保管方法は作成した遺言書の種類に応じて異なり、保管方法によって相続開始までのリスクの大きさも変わってきます。

具体的にどのようなリスクが生じるのでしょうか。ここでどの問題点を挙げるとともに、リスクをなくすための保管方法などを紹介していきます。


遺言書作成後のリスクとは


遺言書は、遺産の行方を左右する書面であり、これが作成されているかどうかは相続人等の経済状況にも大きな影響を与える可能性があります。

そのため、遺言書をせっかく作成してもきちんと保管がされておらず遺言書を紛失してしまうと、遺言者が望む通りに財産を渡すことはできなくなってしまいます。

また、相続人でない者に関しては遺言書を使った遺贈がされなければ遺産を受け取る権利を得られません。

そのため遺贈を指定した遺言書がなくなってしまうと遺産に対する一切の権利を失ってしまいます。

作成後の遺言書に関して起こるリスクはこれだけではありません。何者かによって改ざんをされてしまう可能性もあります。

遺言書の記載に従うと、本来受け取れるはずの法定相続分より小さい額でしか財産が受け取れない方も出てきます。ある相続人の取る分が減ることにより、当該相続人からの債権回収を狙っている債権者も満足に請求ができなくなる可能性があります。

このような利害関係を持つ者が、中身を書き換えてしまったりわざと消失させてしまったりするリスクもあるのです。

そのため遺言者は誰でも手に取れるような場所に作成した遺言書を保管するのではなく、金庫など厳重に管理された場所に置いておくよう工夫する必要があります。


遺言書の保管方法


代表的な、よくある遺言書の保管方法とそれぞれの特徴を紹介していきます。


【自宅での保管】

自筆証書遺言や秘密証書遺言は、遺言者自らが遺言書を保管しなければなりません。多くの遺言書は自筆証書遺言として作成されていますし、「自宅で保管をする」という方が多いのではないでしょうか。

この場合、内容の修正がしたいときもすぐに対応できます。保管に費用がかからないのもメリットです。

他方で、紛失や改ざんなどのリスクにさらされるというデメリットがあります。

特に親族間の仲が良くない場合や、遺言書の存在とその中身が家族に知られている場合には要注意です。


【信頼できる人物に預ける】

自分以外の、誰か信頼できる人物に遺言書を預けることも可能です。

家族や友人などであれば保管費用もかけずに保管してもらえるかと思われます。

この場合、預けた人物が約束に従い適切に保管をしてくれる場合には多くの問題を防ぐことができるでしょう。何者かに改ざんされたりなくされたりするリスクも減らせます。

ただ、その預けた人物が改ざんなどをしてしまう可能性もゼロではないため、完全にリスクをなくせるとまではいえません。

その一方で、弁護士などの専門家に預けることでこういったリスクを最小限にとどめることは可能です。専門家に依頼することになるため費用はかかりますが、専門家自身が遺言書の内容に直接利害関係を持つわけではありませんし、通常、紛失・改ざんなどの心配をする必要はありません。

また、遺言書作成から相談ができるなどのメリットも得られます。


【公証役場での保管】

公正証書遺言の場合、保管に関して遺言者が悩む必要はありません。公証人が作成をした“公文書”として公証役場に原本が保管されるためです。

この場合も費用がかかるなどのデメリットはありますが、原本の紛失や改ざんの問題を限りなくゼロにすることができるというメリットがあります。

相続開始後の「検認」と呼ばれる手続も必要ありません。

自筆証書遺言などでは、まず遺言書を家庭裁判所に持っていき、検認手続として現在の状態を確認する作業をしなければなりません。

相続開始後の忙しい中、この手続の対応をしなければならないのです。公証役場で保管してもらっていた場合にはこれが不要となります。


【法務局での保管】

自筆証書遺言でも安全に保管をしてもらうための制度が近年設けられました。

この「自筆証書遺言保管制度」を利用すれば、所定の手続を行うことで、法務局で遺言書を保管してもらうことができます。

やはり手数料がかかるという面がデメリットにはなりますが、公正証書として作成しなかった場合でも公正証書遺言同等の水準で保管をしてもらえるという利点があります。

また、同制度による保管の場合でも、相続開始後の検認手続は不要となります。


法務局で保管してもらうための手続の流れ


最後に、自筆証書遺言保管制度により法務局で遺言書を保管してもらうための手続について簡単に紹介しておきます。

基本的な流れは次の通りです。


①遺言書を作成する

②保管をしてもらう場所を決める

 ※遺言者の住所地や本籍地、所有している不動産の所在地を管轄とする遺言書保管所から選ぶことができる

③保管申請書を作成する

④遺言書保管書で予約をする

 ※事前予約が必要

⑤遺言書保管書にて保管申請を行う

 ※添付書類として住民票の写し、顔写真付きの身分証明書などが求められる

 ※手数料も1通あたり3,900円が必要

⑥遺言書の提出と保管証を受け取る

 ※保管を依頼した遺言書を特定するために必要な番号が記された保管証が発行される

 ※保管証は再発行ができないため要注意

 

同制度により保管してもらう場合でも、遺言書の有効性までが担保されるわけではありません。そのため遺言書作成を適切に行うことに対する重要性は変わりありません。専門家にチェックしてもらいつつ、慎重に遺言書を作成する必要があります。

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2023.05.02
相続財産の調査方法と費用について主要な財産を例に紹介

遺産分割協議を進めるにあたっては、相続財産の把握ができていなければなりません。そこで相続開始後は、相続人らは財産の調査を行うことになります。ここではその調査方法や調査にかかる費用について解説をしていきます。


相続財産の調査方法について


相続財産としてよくあるもの、価額の大きなものを例に挙げて、それぞれの調査方法を簡単に説明していきます。


【預貯金の調査】

預貯金に関しては、被相続人が口座を開設していた金融機関の特定から始める必要があります。そこでまずは被相続人の自宅を調べてみましょう。通帳があればそこから金融機関の特定が可能です。その他郵便物に書類が届いていることもあります。

ネット銀行を利用して通帳がないケースもありますので、可能ならメールなども確認します。

金融機関の特定後は、残高証明書の発行を請求します。残高証明書を確認できればいくら預貯金があるのかがわかります。


【不動産の調査】

不動産は他の財産に比べて価額が大きい傾向にあるため、特に調査の必要性が高い財産と言えます。

宅地や家屋、投資用の建物など、被相続人が住まいとして使っていた自宅以外にも探してみましょう。

不動産は、固定資産税の納税通知書や登記識別情報通知書を確認することで調査できます。通知書には保有している不動産の番号等が記載されているため、その番号を頼りに法務局にて登記簿謄本を取得しておくと良いです。

あるいは、市区町村役場で固定資産課税台帳を取得することで調べることもできます。


【有価証券の調査】

国債や株式など、有価証券に分類される財産が残っているケースもあります。こちらもまずは自宅を調べ、取引のある金融機関等からの書類がないか、チェックしていきます。

証券や残高通知書などが手掛かりとなります。

保有しているのが上場株式である場合、「証券保管振替機構」に開示請求をすることで、口座を開設している機関がスムーズに把握できます。


【債務の調査】

借金など、マイナスの価値を持つ財産に関しても必ず調査します。

大きな資産があっても、それと同等以上の負債がある場合には相続放棄も検討する必要があるからです。相続放棄は、相続があったことを知ってから3ヶ月以内に行う必要があり、相続放棄など何らの手続も行わず単純承認してしまうと、負債もそのまま相続人が負担しないといけなくなります。

そのためできるだけ早期に財産調査を行い、相続放棄をすべきかどうかの判断ができる状態にしておく必要があるのです。

借金の存在が疑われる場合、自宅を捜索して請求書が届いていないかどうか、督促状が届いていないかどうかをチェックします。

不動産の登記も要チェックです。大きなローンを組むような場面では、不動産が担保に入れるケースがありますので、その形跡が登記から確認できれば借金の存在が確認できるかもしれません。

不安がある場合には「日本信用情報機構」「CIC」「全国銀行協会」などの機関に開示手続きを行うと良いです。

なお、債務が確認され、債権者から請求を受けたとしても弁済に応じてはいけません。被相続人の財産を勝手に処分してしまうと、単純承認したことになってしまいます。


相続財産の調査時にチェックすべきポイント


相続財産の調査の基本は、被相続人の自宅の捜索です。預金通帳などから、取引のあった機関などを特定することができます。

また、価値の財産、例えば貴金属や腕時計などが見つかることもあります。

特に「タンス預金」には要注意です。口座から下ろし、タンスなど自宅のどこかに隠してある現金があるかもしれません。意図的にわかりにくい場所に隠されていることもありますので、家中隅々まで調べるようにしましょう。

生命保険の契約をしていなかったかどうかも要チェックです。

やはり自宅の捜索から始め、保険会社からのお知らせの書面や生命保険証券がないか、探しましょう。生命保険金の受け取りが可能な場合、相続税の計算に一定額を含めなければなりません。


相続財産の調査にかかる費用


相続財産の調査をする場合、それが自宅の捜索であれば費用はかかりません。

しかし各取引先等に請求を行うこともあり、手続に応じた費用が発生することもあります。

例えば預貯金の調査では、金融機関に対して残高証明書の発行を依頼することになります。

そしてこのとき、数百円ないし1,000円ほどの手数料が必要になります。その他、請求時に提出が必要な戸籍謄本の取得に数百円がかかります。

不動産を調査するため固定資産課税台帳を取得する場合は、無償で済むケースもあります。有償のケースもありますが、こちらも数百円ほどで十分です。

登記簿謄本の取得にあたっては、1通あたり600円が必要です。

有価証券の長さにあたり証券保管振替機構に開示請求を行うのなら、1件あたり6,050円費用がかかります。口座名義人だともう少し安くて済むのですが、相続人など、本人以外の人物が請求をするには少し高額の手数料を負担しなければなりません。

相続財産の調査にあたって、様々な機関に対して情報の開示を求めるなど、多くの手続をこなしていく必要があります。調査に漏れがあると後々深刻なトラブルに発展する危険もあることから、一般的には相続人が直接行うのではなく弁護士などの専門家に任せて調査は進められます。

このとき、専門家の依頼にかかる費用も発生します。財産状況が複雑で仕事量が多くなるほど費用も大きくなる傾向にあります。費用の額は依頼先によって異なりますので、まずは相談をしてみると良いでしょう。






 

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2022.11.08
公正証書遺言の効力とは?遺言書の証拠力や相続財産に関すること、無効になるケースなど解説

「公正証書遺言」とは遺言書の1種です。自分だけで作成できる「自筆証書遺言」とは異なり、公証役場で作成手続を進めなければなりませんし、手間や費用もかかります。

しかし公正証書遺言ならではの良さもあります。具体的にどのようなことができるのか、遺言書が一般的に有する効力も含め、公正証書遺言の効力についてここで解説していきます。


公正証書遺言の効力について


公正証書遺言には、公正証書であることに由来する効力や、遺言書一般に共通する効力などがあります。それらを以下にまとめました。


【私文書より高い証拠力を持つ】

遺言は、権利義務関係を生む、私人間の法律行為です。

契約を交わすとき同様、書面(私文書)を作成することで、取り決めた内容を客観的に示すことができるようになります。

しかし、書面があれば常にその内容が真実であるとみなされるわけではありません。

書面に記載されている内容が正確であるかどうかは別の問題ですし、信頼性を欠く書面であると評価されると証拠として十分に効力を発揮しません。

一方で、公正証書の場合には公証人と呼ばれる法律のプロが作成する書面(公文書)です。

私人間の法律行為についての陳述を受け、公証人が書面に記載をしていくことになります。そのため私文書と比べると高い証拠力を持つと評価できます。

遺言書の場合特にこの点が大きな意味を持ちます。

遺言書が効力を発揮するのは遺言者が亡くなってからですので、「本当に本人が作成した文書なのか」「作成時点で本人に遺言能力(十分な理解力等のこと)があったのか」の確認を直接行うことはできません。

これらにつき相続人等が争うことになれば、せっかく作成した遺言書も意味をなさなくなるおそれが出てきます。

そこで公文書として作成される公正証書遺言が役に立つのです。

公正証書遺言では、作成にあたり公証人が本人確認も行いますし、遺言能力の有無に関しても確認がなされます。遺言書に記載する事項につき意味を理解できているかどうか、これらもチェックされます。

こういった理由などから、私文書に比べて公正証書遺言には高い証拠力が認められているのです。

特に、相続をめぐって争いが起こりそうな場合には、これを防止するために公正証書遺言を作成しておくと良いでしょう。


【相続財産に関する指定ができる】

公正証書遺言も自筆証書遺言同様、相続財産に関する指定をすることができます。

何ら指定をしなくても、法律上規定されている法定相続分に従った遺産の分配、あるいは共同相続人間の協議を通して好きに分配していくことは可能です。

しかし遺言書に「相続分の指定」をすることで、各相続人の取得分につき一定の縛りを課すこともできます。

共同相続人全員の意見が揃えば遺言書の内容に従わない遺産分割も可能ですが、そうでない場合には遺言書の内容に拘束されますので、大きな効力を持つこととなります。

また、「遺産分割の禁止」を強制することも遺言書により可能です。

相続開始から5年を超えない期間に限られますが、その間に限り遺産分割を禁止できます。

例えば相続開始直後の協議だと揉める可能性が高いと想定される場合などに、相続人らが冷静になるための期間として一定期間遺産分割を禁止するとのルールを設けるケースがあります。


【相続権に関する指定ができる】

遺言書への記載により、相続権に関する効力を生じさせることも可能です。

例えば「相続人の廃除」「子の認知」などを遺言書を使って行うことができます。

相続人の廃除とは、本来相続人となるはずの人物につき相続権を剥奪することを意味します。過去に当該人物から虐待を受けていたり著しい非行をはたらいていたり、特別な事情がある場合には遺言者が廃除をすることが認められています。

認知をした場合には、婚姻外(結婚していない状態)で生まれた子に対しても相続権が与えられます。いわゆる“隠し子”に対して遺産を渡してあげたいと考える場合には、遺言書を使って認知をすることが有効です。


【遺言執行者や後見人等の指定ができる】

相続人が多く財産関係も複雑であるなど、相続手続が大変と考えられる場合には「遺言執行者」を指定することがあります。

報酬も発生しますが、遺言書に記載した内容の実現を職務とする遺言執行者がいれば、相続人らの負担を軽減することができます。

またこれとは別に、後見人等の指定を遺言書で行うことも可能です。

例えば未成年の子がいる場合、親権者がいなくなることによるリスクを避けるため、第三者を「未成年後見人」として指定することがあります。信頼できる人物にお願いをし、子の財産管理等を委ねるのです。

未成年後見人に指定できるのは親族に限られません。弁護士など、後見制度に精通している専門家に依頼することも可能です。


【遺留分侵害額請求を妨げることはできない】

遺言書をもってしても、遺留分制度に背くことはできません。

家族等の生活保障などの観点から日本では遺留分制度が設けられています。最低限の財産については、一定の相続人には確保する権利が認められていて、それを侵害する形で遺言書が作成されていたとしても「遺留分侵害額請求」を行うことにより財産を回収することができるようになっているのです。

これは公正証書遺言であっても同じです。

「公文書として作成した遺言書だから遺留分の影響を受けない」ということもありません。

そこで公正証書遺言であろうと、後々トラブルが起こらないよう遺留分にも配慮した遺産分割の指定を行うことが大切です。


【検認手続が不要になる】

自筆証書遺言の場合、相続開始後、遺言書は家庭裁判所に持っていき「検認手続」を行わなければなりません。その時点における遺言書の内容を保全し、改ざん等のリスクを排除するために行われます。

これに対し公正証書遺言では検認手続は不要です。

公証役場で原本が保管されていますので、そもそも改ざん等のリスクもありませんし、紛失も起こらないからです。


【公正証書遺言の効力に有効期限はない】

公正証書遺言を使えば上記のような効力を発揮することができます。

有効期限もありません。時効のようなルールは適用されないため、いったん有効に作成された遺言書は破棄・変更をしない限り有効なままです。

なお、保管に関しては期間の概念があります。

公正証書一般に対して、次の規定が適用されます。


  第二十七条 公証人は、書類及び帳簿を、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に掲げる期間保存しなければならない。ただし、履行につき確定期限のある債務又は存続期間の定めのある権利義務に関する法律行為につき作成した証書の原本については、その期限の到来又はその期間の満了の翌年から十年を経過したときは、この限りでない。

  一 証書の原本、証書原簿、公証人の保存する私署証書及び定款、認証簿(第三号に掲げるものを除く。)、信託表示簿 二十年

                               :

  3 第一項の書類は、保存期間の満了した後でも特別の事由により保存の必要があるときは、その事由のある間保存しなければならない。

  (引用:e-Gov法令検索 公証人法施行規則第27条 第1項第1号・第3項


公証人法施行規則第27条第1項第1号の規定に従えば20年間が保管期間ということになるのですが、同条第3項によれば“特別の事由”があればその間保存をするとあります。

公正証書遺言の保管はこの“特別の事由”にあたると解釈されており、20年に限定されず、公証役場が半永久的あるいは遺言者の生後120年までの間保存をしてくれます。


公正証書遺言が無効になるケース  


公正証書遺言を作成したとしても、これが無効になってしまうケースがあります。

例えば「遺言者に遺言能力がなかった」「公正証書遺言の作成にあたり口授を欠いていた」「遺言内容が公序良俗に反していた」「証人が未成年者・推定相続人・受贈者であるなど不適格者であった」「遺言書の作成が詐欺や強迫に基づいていた」といったケースなどです。

公証人が作成に関与するためこういった問題が起こる可能性は低いと考えられますが、万が一これらに該当したときには無効になり得ることは理解しておきましょう。


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2022.10.06
面会交流権の決定時期について ~話し合いのベストなタイミングや面会交流権に関する注意点~

未成年の子がいる夫婦が離婚をする場合、「親権者」をどちらかに定めなければなりません。そしてその親権者が子どもと一緒に暮らすこととなりますので、親権者ではない親は子どもと別で暮らすこととなります。

しかし子どもの利益を考え、別居している親とも会う権利が認められています。この「面会交流権」は夫婦間で話し合ってその具体的内容を定めることになるのですが、親権者のように、面会交流権は離婚時に定めるべき必須事項とはされていません。

そこでここでは、面会交流権はいつ決定すべきなのか、またその決定にあたっての注意点なども解説していきます。


面会交流権とは


面会交流権は、別居している子どもが親と面会をする権利のことです。

基本的には当事者である夫婦間で話し合い、ある程度自由に面会の方法や頻度などを定めることができます。

親権者の定めのように厳格なルールには縛られておらず、例えば一緒に旅行をする形で面会交流をすることなども当事者間で異議がなければ問題とはされません。


面会交流権の決定時期


面会交流の方法等を定める場合、“その協議をいつ行うのか”ということも問題になります。


【決定すべき時期に決まりはない】

親権者については離婚時に必ず定める必要があります。

しかし、面会交流の内容を離婚時に定めなければならないとするルールはなく、面会交流について定めないまま離婚を成立させることもできます。

実際、面会交流に関する条件を定めることなく離婚をしている例も少なくないと言われています。

離婚そのものに対しては協議書を作成していたとしても、その協議書に面会交流に関する条項が設けられていないということもあります。

しかしながら面会交流の条件を定めなかったからといって面会交流権が認められなくなるわけではありません。いつでも必要に応じて両親が話し合って面会交流を実施することは可能ですし、後からその協議を行うことも可能です。


【ベストは離婚時に定めること】

離婚時に話し合っていなくても面会交流権が剥奪されるわけではありませんが、できるだけ離婚時に定めておくことが望ましいです。

元夫婦間の関係性が悪くなっているときほど離婚時にしっかりと話し合っておく必要があります。

そうしておかなければ、子どもと会いたくなってもスムーズに話し合いが進められず、面会交流がなかなかできないという事態に陥りかねません。


面会交流の内容を定める際の注意点


面会交流についての話し合いを進めるにあたっては、事前に以下の内容に留意しておくことが大切です。


【なかなか面会交流の内容が決まらないことがある】

両親が感情的にならず、冷静に話し合える状態ならすぐに協議を終えられることでしょう。

しかし一方または双方が感情的になっている、強く拒絶反応を示しているといった場合にはなかなか話し合いが進まず面会交流の条件等も決められません。

このときにはまず、家庭裁判所に調停の申立てを行うことになります。

調停委員が間に入り話を進めてくれ、互いに直接顔を合わせる必要がなくなります。そのため感情的にならずに落ち着いて協議が進められ、また、法律のプロの意見も反映させつつ面会交流の内容を定めていくことができるようになります。

しかし調停でも一方が同意をしなければ決着を付けられません。

そこで最終的には家庭裁判所による面会交流に関する審判を受けることになります。

調停が不成立になることでそのまま審判手続へと移行し、ここからは裁判官が当事者の主張などを聞き、妥当な面会交流の方法を定めていきます。

必ず結論を出すことができますが、思い通りの結果にならないこともあります。


【面会交流権が制限されることがある】

面会交流権が制限されることもあります。

特に子どもに対して虐待をしていたときには面会ができなくなる可能性が高くなります。

他にも、子ども自身が面会交流を拒否していると面会できなくなる可能性があります。ただし子どもが幼いときには拒絶をしていてもそれだけの理由では面会交流権は制限されにくく、逆にしっかりと自らの意思表示ができる年齢であると評価される場合には面会ができなくなる可能性が高くなります。子ども本人の意思能力等によりますが、傾向としては15歳以上になると本人の意思で拒絶ができるようになると言えます。


【重要事項は漏れなく定める】

面会交流の内容の定め方に決まりがなく自由である反面、当事者間で決めるべき事項をしっかり見定めて協議を進めていく必要があります。

例えば「面会の回数・頻度」「面会の時間」「子どもの受け渡し方法」「連絡の方法」「面会を断ることができるケース」などが挙げられます。子どもの年齢や互いの生活状況によっても適切な定め方は変わってきますので、弁護士に相談してトラブルのないよう面会交流についての協議を行うようにしましょう。

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2022.09.06
借金があるときの相続について! 相続放棄の手続や債権者への適切な対応とは

遺産の中には、借金などマイナスの価値を持つ財産が含まれていることがあります。そのため相続にあたってはプラスの財産のみならずマイナスの財産にも着目して、相続をするのかどうかの判断をしていくことが大切です。相続をしたくないのであれば「相続放棄」の手続を執らなければならないのですが、借金がある場合には注意すべきことがいくつかあります。

そこでこの記事では借金があるときの相続について、特に相続放棄に関わる手続などを解説していきます。


相続財産に借金があるとどうなるのか


遺産には様々な種類の財産が含まれます。現金や預貯金、自動車、不動産、有価証券などがあり、それぞれ承継するにあたって必要な手続が異なります。借金についても同様です。経済的にはマイナスの価値を持つものですが、被相続人が借金をしていた場合には相続人は借金を返す義務も引き継ぐことになってしまいます。

そこでプラスの財産とマイナスの財産とのバランスを考慮し、相続放棄の検討を行います。

何ら手続を行わなければ「単純承認」となり、被相続人が有していた権利や義務をそのまま相続人らが承継することになります。つまり、借金がある場合には残債務のすべてを弁済する義務を負わなくてはなりません。

単純承認せず、相続放棄もせず、「限定承認」を行うというやり方もあります。簡単に説明すると、プラスとマイナスの財産を差し引きして、プラスの財産が残ったときにその分のみを承継するといった承認方法になります。相続権を残しつつリスクを小さくできるというメリットが得られますが、手続が複雑であることやすべての相続人らで一緒に限定承認をしなければならないなどのハードルがあります。そこで限定承認はあまり利用されていないという実態があり、ここでは相続放棄に絞って言及をしていきます。


相続放棄の手順


相続放棄をするまでの流れを説明していきます。相続放棄の手続そのものはすぐに終わりますが、下準備等に多くの時間・労力を要します。


【相続財産の調査】

相続放棄をしてしまうと、一切の相続人としての権利を失うことになります。借金があるという事実のみをもって相続放棄の決断をしてしまうことのないよう留意しなければなりません。たとえ借金があったとしても、借金の額が小さく、それ以上の価値を持つ遺産がある場合には特段大きな問題とならないこともあります。

そこでまずは相続財産の調査を行いましょう。

借金の確認をするには、被相続人の口座情報をチェックしたり自宅に金銭消費貸借証書などの書類がないか確認したりすると良いです。借金の債務者であるかどうかということに加え、誰かの借金に関する保証人になっていないかどうかの確認も大事です。また、本人が亡くなってからしばらく期間が空いている場合には督促状が届いている可能性もあります。新たに届いた郵便物がないかもチェックすると良いでしょう。


【必要書類の準備】

相続財産の調査の結果、相続放棄を行うことの決断をしたのであれば、必要書類の準備を進めていきましょう。

相続放棄を行うには、相続放棄申述書と戸籍に関する書類を準備する必要があります。

相続放棄申述書に関しては家庭裁判所で入手が可能です。相続放棄をする理由などを記載していきます。

戸籍に関する書類としては、被相続人の戸籍附票または住民票除票、相続放棄する人自身の戸籍謄本が必要です。被相続人の戸籍謄本については、出生から死亡まですべてを集めておきましょう。


【相続放棄の申述手続】

上記書類の提出と手数料の支払いを行い、相続放棄の申述手続を進めます。

手数料として必要なのは収入印紙800円分と郵便切手代のみですので、大きな費用はかかりません。

なお相続放棄の申述手続ができるのは、“自身に相続開始があったことを知ってから3ヶ月”以内に限られます。

そのため「債権者から請求を受けることになればそのときに相続放棄をしよう」などと安易に考えてはいけません。相続の事実を知ったのであれば3ヶ月以内に調査や書類準備なども済ませて家庭裁判所で相続放棄の申述を行う必要があります。


相続放棄後の債権者への対応


相続放棄の申述を行い、家庭裁判所に受理がなされると、「相続放棄申述受理通知書」を受け取ることができます。これにより相続放棄をしたことの証明ができるようになります。

しかしこの通知書が全債権者に自動的に送られるわけではありません。債権者は特定の相続人につき相続放棄をしたのかどうかを知りませんし、単純承認となるのが基本ですので、相続をしたものと考え請求をしてくる可能性があります。

そこで相続放棄申述受理通知書をもって相続放棄をした旨債権者に伝えましょう。請求を受けてから対応するのではなく、相続人側から早めに伝えてあげると良いです。


手続中の財産管理に注意


相続放棄の検討中から相続放棄の申述が受理されるまで、そして受理後に至るまで、一貫して相続財産の管理には注意が必要です。

勝手に被相続人の現金や預貯金などを使ってしまうと単純承認をしたものとして扱われる可能性があります。家具の処分や契約の解約などにも要注意です。

さらに、借金の返済やその他未払いになっている家賃や医療費などへの返済も勝手に行わないよう注意しましょう。支払いを行うのではなく、現状を伝えて保留としてもらうよう求めると良いです。

財産の扱いには困ることもあるかと思いますので、弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。

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