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2023.12.04

相続人が複数いるときは遺産分割を行います。どのように財産を分けるのか、いくつか遺産分割には方法がありますし、そのときに知っておきたいポイントや注意点もありますので当記事で解説をしていきます。家族間、その他の人物との間で揉め事が起こらないよう、法律上のルールも踏まえて遺産分割に臨みましょう。


遺産分割とは

亡くなった方を「被相続人」、相続財産を承継する方を「相続人」と呼びます。相続人が1人しかいないときは、相続財産をまるまる1人が取得することになりますが、相続人が複数人いるときは共同相続をすることになります。

共同相続となる場合、誰が・どの財産を・どれだけ相続するのかを決めることとなります。これを「遺産分割」と呼びます。

なお、遺産分割の方法は大きく次の3つに分けることができます。


【遺産分割の3つの方法】


指定分割

遺産分割の方法について、遺言書で指定をされているときの遺産分割方法。取得割合を指定されていることもあれば、特定の財産を指定されていることもある。


協議分割

遺言による指定がないものに関して、共同相続人の協議(いわゆる「遺産分割協議」のこと。)により定める遺産分割の方法。遺言書が作成されているときでも、指定のない部分については協議分割を行う。共同相続人全員の合意がなければ成立させられない。


審判分割

遺産分割協議を成立させられないとき、相続人が遺産分割を求めて家庭裁判所に申し立てを行う。この場合の、家庭裁判所による遺産分割の方法が審判分割。なお、家庭裁判所は分割の審判を行う前に調停分割を試みるものとされている。


遺産分割協議について


相続開始後、いきなり遺産分割協議を始めることはできません。まずはいくつかの情報を調査していく必要があります。また、協議を円滑に進める上では法定相続分のことなど法律上のルールについてもある程度理解しておくことが望ましいです。

これら遺産分割協議を進めるにあたり知っておきたいことを以下にまとめていきます。


【事前に調べておくこと】

遺産分割協議に先立って、次の情報は調査しておきましょう。


・遺言書の有無とその内容

・相続財産の内容と価額

・相続人

・法定相続分と過去の贈与など

 

遺言書で遺産分割の方法について指定がされているときは、協議すべき範囲が狭まります。そもそも協議を行う必要もないかもしれません。そのためまずは遺言書が作られていないか、被相続人の自宅や契約していた貸金庫、公証役場などをチェックしていきます。

また、目的物となる相続財産の内容も当然把握しておかないと話が進められませんし、その話し合いに参加する相続人も全員把握しないといけません。

さらに、相続割合の指標にもなる法定相続分も調べておきましょう。ただ、実際の取得分は法定相続分から増減することもあります。特定の人物だけ大きな資産を受けていた場合などにはその分を考慮しないとバランスが取れないからです。そのため過去の贈与やその他相続分に影響を与え得る行為についても調べていきます。

具体的に何を調べないといけないのか、どうやって調べていくのか、わからないことがあるときでも弁護士に相談すれば解決できます。


【相続人は全員参加で協議を行う】

前項の情報が整理できて下準備が調えば、相続人が全員参加のもと、協議を進めていきます。

必ず、全員で協議を行うようにしましょう。参加すべき人物を1人でも欠いた遺産分割協議は無効となってしまいますので要注意です。そこで次の人物がいるときは協議に参加するよう求めましょう。


遺産分割協議の参加者


相続人全員

配偶者は常に相続人となる。

配偶者とともに共同相続人となる人物は、子ども(第1順位)、親(第2順位)、兄弟姉妹(第3順位)の順に定まる。

※代襲相続などにより相続人の範囲が広がることもある。


包括受遺者

相続財産の取得について、遺言書にて、割合で指定を受けた人物。特定の財産ではなく「財産の2割」などと指定されたときは権利も義務も取得することになり、その範囲で相続人と同等に扱われることから、この受遺者についても協議に参加する。


相続分譲受人

相続人から相続分を譲り受けた人物。


遺言執行者

遺言内容の実現を職務とする人物。遺言書による指定あるいは裁判所から指定を受けた人物。


後順位の相続人、例えば子どもが相続人になる場合における被相続人の親や兄弟姉妹については協議に参加しません。また、相続を放棄した方や欠格となった方、廃除された方なども参加しません。

※相続欠格:先順位の相続人を殺害したなど、特定の行為によって法的(自動的)に相続権を剥奪されること。

※相続廃除:被相続人に対する虐待などがあり、被相続人が相続させないよう手続を行うことで相続権を剥奪すること。


【各自の相続分を決めるポイント】


遺産分割協議は揉めることも多いです。もし、誰かが一方的に有利になるような割合で取得しようとした場合、その他の相続人から反発を受けることになるでしょう。ただ、何をもって不平等と捉えるのか、その認識を当事者間で共通させておくことが大事です。

必ずしも均等に分け合うのが良いともいえません。民法上も立場に応じた相続分を定めており、被相続人との関係性が近いほど大きな割合が得られるものとしています。例えば配偶者Aと子どもB・Cがいるとき、Aは全財産の1/2、BおよびCはそれぞれ全財産の1/4を取得することになります。配偶者の取得分は子ども倍となりますが、法定相続分を知っていればその結果を不当とは考えません。

しかしながら、具体的な相続分を調べる上では過去に被相続人から受けた財産上の利益や、被相続人のためにした行為なども考慮することが大事です。そこで①特別受益の有無、②寄与分の有無に着目しましょう。


《相続人が特別受益を受けている場合の相続分》


※特別受益:過去、被相続人から婚姻や養子縁組のため、もしくは生計の資本として受けた贈与のこと。

具体的な相続分 = (相続財産の価額+贈与価額)×法定相続分-贈与価額

なお、被相続人の配偶者(婚姻期間が20年以上)が特別受益として居住用建物等を取得していたときは、基本的に上記計算式へその価額を含めません。被相続人が「その贈与分については特別受益として扱わない」と意思表示したものとして法律上推定されるからです。


 


《相続人に寄与分が認められる場合の相続分》


※寄与者:被相続人の財産形成や維持について特別の寄与をした者のこと。被相続人の事業に関して労務の提供をした、あるいは財産上の給付をした、または被相続人の療養看護、その他特別の寄与をしたときに寄与分を考慮する。

具体的な相続分 = (相続財産の価額―寄与分)×法定相続分+寄与分


【不動産の分割に関するポイント】

現金や預貯金については分割も容易です。しかし不動産の場合は分割が容易ではなく、「現物分割(土地や建物など、物件単位でそのまま分ける方法)」だと相続人各自が受ける恩恵にも差が生じてしまうことがあります。

「共有」の状態とすることで平等に持分を持つこともできますが、管理・処分の面で難があり、将来的にトラブルが起こるリスクが大きくなります。そのため一般的には共有は推奨されません。

「換価分割(不動産の売却から得られた金銭を分割する方法)」や「代償分割(不動産を取得者がその他の相続人に金銭を支払って分割する方法)」などもありますので、適切な分割方法について慎重に判断することが必要でしょう。

他にも、不動産があるときに留意すべきポイントはたくさんあります。上記の、婚姻期間20年以上の夫婦間で自宅の贈与があった場合の法定相続分のこともそうですし、相続税についても無視はできません。

不動産、特に土地があるときは課税価格が大きくなりやすいため、税理士にも相談しつつどう取り扱うべきかを考える必要があるでしょう。

さらに、配偶者が暮らしていくために自宅と生活資金を得る必要があるのなら、近年法定された「配偶者居住権」の行使も検討することが大事です。これは、自宅を取得することで生活資金として使える預貯金等がほとんど取得できなくなる問題を解決するために効果を発揮します。

かつては建物の所有者と賃貸借契約を結ぶ方法で対応されていましたが、所有者に契約締結の義務はないことから配偶者の居住権が確保されないケースもあったのです。そこで配偶者居住権を法律上認め、所有権の取得より低廉な価額で居住権を得られるようにしたのです。住まいと生活資金の両方を確保する必要がある場合は、弁護士に相談して配偶者居住権についても話を進めていくと良いでしょう。


【遺産分割協議書の作成】

協議がまとまれば、その結果を「遺産分割協議書」として書き記します。この文書は、対外的に各々の取得分を証明するため、紛争の蒸し返しを防ぐためにも役立ちます。

書式の指定はありませんので、自由な形式で作成することができます。ただしトラブル防止の観点から、次の事項については必ず含めるようにしましょう。


・被相続人を特定する情報(氏名、亡くなった日、生年月日、本籍地等)

・相続人を特定する情報(氏名、住所)

・相続人全員の署名押印

・相続人各々が取得する財産を特定する情報(不動産であれば所在や地番、地目等)(預貯金であれば銀行名と支店名、口座番号等)

・作成日付


遺産分割協議の注意点



遺産分割協議を行う際、上述の通り相続人全員の合意が必要となります。そのため隠し子の存在などにも留意して相続人の調査は進めていかなければなりません。そして法定相続分を参照する場合、特別受益や寄与分なども調べていくことも大事です。

相続分に関連して、税金の負担にも留意しましょう。多く取得するほど大きな税負担がかかります。同じ相続財産でも、分割方法、特例の利用などによって税負担を小さくできることもありますので、税理士にも相談して分割方法を考えていくのも良いです。

また、遺産分割協議を行う時期にも注意しましょう。協議自体、「〇〇までに行わないといけない」などとルールは定められていません。しかしながら、相続税の申告は相続開始から10月以内に行う必要がありますので、それまでに協議を済ませておかないといけません。

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