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2023.07.25

遺産相続をめぐって相続人やその他関係者と揉めることがあります。特に不動産は価額が大きな財産ですし、相続による取得やその後の維持に関して手間や費用も発生します。

さまざまな要因によりトラブルが起こり、相続をきっかけに人間関係の悪化を招くおそれもあります。

この問題を防ぐためにはどうすればよいのでしょうか。当記事では不動産相続においてよくあるトラブルを紹介し、各トラブルへの対策のポイントについて解説していきます。


トラブル①:不動産の取り合い


遺産の分割方法は、基本的に相続人の間での話し合いにより定めます。


取得割合については民法で法定相続分が規定されており、配偶者と子どもが相続人になる場合はそれぞれ「1/2」が取り分となります。

配偶者と被相続人の親が相続人になるときは、配偶者が「2/3」、親が「1/3」。

配偶者と兄弟姉妹が相続人になるときは、配偶者が「3/4」、兄弟姉妹が「1/4」を取得することになります。

※配偶者以外の同順位の相続人が複数いるときは、その取得割合を人数で案分する。

ただし遺産分割協議で話し合うことで法定相続分と異なる割合で取得することもできますし、各々具体的に何を取得するのかは当事者の話し合いで決める必要があります。

現金であれば均等に分けることができるところ、不動産は分けるのが容易ではありません。そこで取り合いになりトラブルが生じることもあります。


【対策のポイント】

不動産の取り合いが起こりそうな場合、あるいはその危険性が明らかでない場合でも、被相続人が生前に「遺言書の作成」をしておくことが1つの対策になります。

遺言書に「甲土地は、配偶者Aに譲る」などと記載しておくことで取得者を定めることができ、取り合いによるトラブルを防ぐことができます。

このときの注意点として大きく2つ挙げることができます。

1つは“遺言書を作成しても不満が残る可能性があるため、事前に話し合って、納得を得ておく”ということです。

「自分がもらえるかもしれない」との余計な期待を抱かせないよう、事前に「この土地は配偶者にあげようと考えている」という旨を伝えておけば、相続開始後の人間関係の悪化なども防ぎやすくなります。

もう1つの注意点は、“遺言書を適式に作成すること”です。

遺言書は法令に準拠して作成しないと、法的な拘束力を働かせることができません。遺言内容に不満を持つ人物が無効の主張をしてくるリスクがありますので、弁護士などの専門家にサポートをしてもらい有効な遺言書を作成しましょう。

先に不動産を譲渡することに問題がなければ、生前贈与という手段も検討すると良いでしょう。


トラブル②:共有により不動産活用に弊害が生じる


不動産は、誰か1人の所有下に置く必要はありません。

複数の相続人で“共有”することも可能です。

ただ、共有をすべき特段の事情がないのであれば、これは避けるべきです。 

共有することになった不動産は、その後各人自由な処分ができなくなり、扱いにくいです。

1人が「この建物を売りたい」と考えても、所有者全員の合意がなければ売却はできません。賃貸に出すのも容易ではなくなります。


【対策のポイント】

共有によるトラブルを避けるためには、遺産に含まれる不動産を放置しないことがまず必要です。遺産は自動的に相続人のものとなり、別途分割方法を定めないと共有状態になってしまいます。

そこで第一に、「共有とすべきかどうか」の検討を始めます。

共有をする必要がある場合は、共有のリスクを理解した上で、意見の合う者とのみ共有するように留意しましょう。

相続人が配偶者と子ども1人だけである場合など、近い将来単独所有になることが予想されるときは大きな問題は起こりにくいです。この場合、配偶者が亡くなると子どもが単独で所有することになります。

共有すべき積極的な理由がないときは、相続人の誰か1人の単独所有とする方向性で話を進めると良いです。

単独所有にしたからといって、その所有者以外が損をするわけではありません。不動産以外の財産を得ることでバランスを取れば問題ありません。


トラブル③:分割方法についての意見が合わない


不動産を誰が所有するのか、どのように遺産を分割するのか、といったことにつき話がまとまらないこともあるでしょう。

特に不動産が遺産総額の大半を占めているような場合だと、バランス良く相続人間で遺産分割することが難しくなってしまいます。


【対策のポイント】

遺産の分割方法を把握し、経済的利益のバランスが取れるように分割することが重要です。 

不動産がある場合の遺産分割方法は、大別して4つです。

1つは上述の「共有」。その他の分割方法として「現物分割」「換価分割」「代償分割」が挙げられます。


・現物分割

不動産をそのまま相続する方法。現金と預貯金、有価証券、不動産がある場合、1人が不動産、もう1人がその他を取得する、といった分割方法。

メリット:シンプルで明瞭。手続も簡単。

デメリット:均等な価額で分割することが難しい。


・換価分割

不動産を売却して得た現金を分割する方法。

メリット:平等に遺産分割しやすい

デメリット:不動産を残すことができない


・代償分割

不動産を相続した人物が、他の相続人に金銭を支払う方法。

メリット:平等に遺産分割しやすい。不動産を残すことができる。

デメリット:不動産取得者にかかる現金の負担が大きい


不動産が唯一の遺産であった場合、平等な遺産分割とするには、不動産を共有するほか「換価分割」または「代償分割」という方法があります。

その不動産をそのまま残す必要がないのであれば、換価分割により現金化すれば容易に平等な分割が実現されます。ただし売却できるまでに時間がかかってしまいますし、自宅として使っている場合にはこの選択肢を取ることはできないでしょう。

そこで「代償分割」も検討します。不動産を取得する方に十分な現金がある場合、他の相続人に対して代償金を支払うことで問題を解決できます。しかし場合によっては数百万円もの大金を現金として渡さないといけなくなるため、常に選択できる手段でもありません。


トラブル④:取得や維持に大きなコストが発生する


遺産分割の方法や不動産の取得者につき争いがなくても、その取得や維持に関するトラブルが起こることがあります。

まず、相続するときに相続税が課税されます。不動産に限った話ではありませんが、現金を相続した方ならそのまま相続財産の一部を相続税として納付できるところ、不動産を取得した方はその他の財産から納付額を捻出しないといけません。

不動産の価値が非常に大きい場合、相続人がもともと持っていた現金等から数百万円もの税金を納めないといけなくなり、税負担の割合が大きくなってしまいます。

その後不動産を維持し続けるのにも、固定資産税がかかってきます。メンテナンスなど、管理等にも費用がかかります。


【対策のポイント】

税金等のコストが問題となりそうな場合、無理に不動産を残す必要がないのなら、「被相続人が事前に売却しておく」のも1つの手です。 

不動産を残す場合でも、「遺産に対する現金等の割合を大きくしておく」ことで対処可能です。

現金のほか、現金化が容易な財産が多く残っていれば、不動産取得者がその財産から税金等を負担することができます。


不動産相続のトラブルを防ぐためには事前の対策が重要


不動産相続に伴い大きなトラブルが発生する可能性があります。

相続人同士で話し合い、上手く協議がまとまることもありますが、決着までに時間がかかったり、人間関係が悪くなったりする危険性があります。

そのため不動産があるときの相続では特に、専門家に相談することをおすすめします。

不動産を売却したり賃貸に出したり、評価額を知りたいときなどは、不動産会社など不動産そのものを専門とする業者・専門家を利用すると良いでしょう。

不動産相続に伴う相続税や固定資産税など、税制について詳しく知りたいという方は税理士を利用します。節税対策、特例や控除制度の利用などについてもアドバイスがもらえるでしょう。

その他相続手続全般のサポート、相続人間の揉め事への対処やその他関係者との交渉を求めるなら弁護士への相談が適しています。ここで紹介した一般的な対策のほか、個別の事情に合った最適な対策案を知ることができます。

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