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2021.10.30

不動産の相続登記を行う流れ


一般的に不動産の相続登記は以下の手順で行われます。


【①土地の分配方法を決める】

 遺言通りに遺産を分割する場合を除き、相続が発生した際、自宅や土地などの不動産の財産を、誰が、どの程度相続するのかを決める遺産分割協議が行われます。現金や預貯金などと異なり、不動産はすぐに現金化できず、また複数の相続人で分割しにくいため、相続人全員が納得のいく方法で財産を分割するのはなかなか困難です。

 不動産の分配方法としては、「現物分割」、「換価分割」、「代償分割」の3通りの方法があります。


●現物分割

特徴:A不動産を長男に、B不動産を次男に、というように、相続財産の形を変えずに各相続人にそのまま分割する

メリット:・分割の際に手間が明からない・財産をそのまま残すことができる

デメリット:・財産額に差があると、相続分通りに遺産分割できず、不公平となる


●換価分割

特徴:遺産の一部または全部を、競売や任意売却などによって金銭に換えてから分割する

メリット:・公平な分割が可能となる・不動産など、現物では分割しにくい財産も分割可能

デメリット:・財産の現物が残らない・売却の手間や費用が掛かる・売却益に、所得税や住民税がかかる


●代償分割

特徴:特定の相続人が自分の相続分を超える遺産の現物を取得し、取得した相続人が他の相続人に金銭(代償金)等を支払う

メリット:・公平な分割が可能・農地や事業資産などを細分化せずに済む

デメリット:・代償金を支払う能力がなければ利用できない・代償金が支払われない可能性がある


いずれの分割方法にも一長一短があるため、ケースに応じて適当な方法で分割するようにしましょう。

なお、その他の分割方法として「共有」があり、これは1つの財産を複数の相続人で持ち合う方法です。公平な分割が可能なため、一見、良い分割方法と思われがちですが、相続不動産を共同で管理しなければならず、何らかの理由で相続人間の仲が悪くなった場合や誰かが経済的困窮に陥った場合、うまく共同管理し続けるのが困難となります。また売却などの処分を行う際にも共同相続人全員の同意が必要になり、意見に相違がある場合は容易に処分することができません。共有状態のままさらに相続が起きると、権利関係が複雑になるリスクもあります。共有は問題の先送りであり、基本的に好ましい状態ではなく、将来的に上記で紹介した方法で遺産を分割する必要があります。

遺産分割協議の結果は遺産分割協議書にまとめ、相続登記の際に提出します。


【②相続登記に必要な書類を準備】

 遺産の分割方法が決まれば、各相続人が取得した財産の名義変更を行います。相続登記(相続をきっかけとする不動産の名義変更)を行う際は、以下の書類が必要となります。


・登記申請書

・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本など

・被相続人の住民票(除票)

・相続人全員分の戸籍謄本、住民票写し、印鑑証明書

・遺言書又は遺産分割協議書

・固定資産評価証明書

・登録免許税


 登録免許税は、登記の際に必要となる税金で、相続登記の場合は「固定資産税評価額(1,000未満切り捨て)×0.4%」(遺贈の場合は2%)が課税額となります(100円未満切り捨て)。なお、登録免許税は現金納付が原則ですが(登録免許税法21条)、実際は収入印紙を登記申請書に張り付けて申請するケースがほとんどです。


【③書類を法務局へ提出】

上記の書類に必要事項を記載の上、不動産の所在地を管轄する法務局(または地方法務局、支局、出張所)へ提出し、登記申請を行います。相続登記の申請時期については制限がありませんがなるべく早い段階で手続きを行うことをおすすめします。詳しくは後述しますが、相続登記をしないと、不動産の売却や担保設定ができず、また所有権等をめぐるトラブルに巻き込まれるリスクなどがあります。

なお、2021年4月21日に参議院本会議で土地の相続登記申請義務化を内容とする法案が成立しており、2024年度を目途に施行される予定です(参考:法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)」)。この本案では、不動産を取得した相続人が、その取得を知った日から3年以内に登記申請を行わないと、正当な理由がある場合を除き、10万円以下の過料の対象となるとしています。このため、相続登記は迅速に行うことが重要です。

登記の申請をすると、登記所では申請の受付、申請書の調査、登記記録への記録(記入)、校合の順で処理され、登記完了予定日までに登記が完了します。その間に申請書等に不備がある場合は、申請者またはその代理人に連絡して申請の補正を促します。補正に応じない場合や補正ができない内容のものであれば、申請は却下ないし取り下げを促されます。

登記が完了すると、登記識別情報通知書(通知を希望しない場合等を除く)、登記完了書が通知されます。また希望した添付書類も還付されます。


相続登記をしなかった場合のデメリット


遺産分割後はなるべく早い段階で相続登記を行うようにしましょう。相続登記をしなかった場合のデメリットとしては、以下のものがあります。

なお、前述の通り、所有者不明土地の解消を背景とする土地の相続登記申請義務化に関する法案が成立しており、民法等一部改正法成立後は所定の期間内に相続登記を行わなければ過料の罰則があります。相続登記をしないリスクが増加するということであり、相続登記を行う重要性が増しているといえるでしょう。


【不動産を売却・担保設定できない】

不動産を売却したり抵当権等の担保を設定したりする際は、その不動産の所有者であることを示すため、登記を行う必要があります。

売却や担保設定の際に登記をしていないと第三者に対抗できないため(民法177条参照)、一般的に売却等の際は所有権移転登記手続きなども同時に申請することになります。しかし、そもそも不動産の名義が被相続人のままだと買主名義に変更できないため、まず売主名義に相続登記をしなくてはなりません。また売買等の際に売主と所有者が一致していないと買い手が見つかりにくいなどのデメリットもあります。

不動産をアパートとして貸し出している場合だと、借家人から賃料を受け取れない可能性があります。民法605条の2第3項は次のように規定しています。

第一項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。

この条文は2020年4月1日に施行された改正民法に新たに設けられたものですが、最判昭和49年3月19日民集28巻2号325頁を踏まえた規定です。この規定によると、賃貸不動産を相続した相続人が借家人に対して賃料を請求した際に、相続登記をしていないと借家人は賃料の支払いを拒むことができます。この点も相続登記をしないデメリットの一つといえるでしょう。

現時点で売却や担保設定の予定がない場合でも将来的に必要となる可能性があります。後述の通り、時間が経過するほど、相続登記に必要となる書類を入手しにくくなるため、不動産の売却等が必要となった時に書類が集まらず、売却できなかった、ということにならないよう早い段階で相続登記しましょう。


【相続が起きるたびに権利関係が複雑になる】

相続登記をしていないと、その不動産は相続人全員が法定相続分に応じて共有している状態です。この状態のまま、相続人の一人が亡くなると、その故人の相続人がその共有分を相続することになり(いわゆる「数次相続」)、その不動産の相続人が増えることになります。数次相続が繰り返し起きると、相続人が増え続け、権利関係が複雑化します。遺産分割協議を通じて相続登記を行う際は、協議を行うこと自体が困難となり、また協議の成立には相続人全員の同意及び印鑑証明書が必要で、協議をまとめるのも一苦労することになるでしょう。


【不動産の所有権をめぐるトラブルに巻き込まれる恐れがある】

不動産における所有権等の権利を主張する第三者が現れた場合、両者の優劣は不動産登記の先後によって決着をつけます(民法177条)。そして相続において、不動産につき遺言や遺産分割などで法定相続分を超える権利を取得した場合、相続登記をしていないと、その法定相続分を超える部分につき第三者に対抗することはできません(民法899条の2第1項)。

例えば、AとBが相続人で、Aが不動産を全部取得することに決まったとしましょう。しかしBは借金をしており、Bの債権者(金銭を貸した側)が債権を保全するため、Bの代わりに登記(代位登記)をして差し押さえたとします。この場合、相続登記をしていないとAは自己の法定相続分を超える部分につき、その債権者に対抗することができません。

このように早急に相続登記手続きをしないと、不動産の所有権を失うリスクがあります。


【時間が経過するほど、手続きに必要となる書類を入手しにくくなる】

相続登記を行うには、被相続人の戸籍謄本等や住民票(除票)などが必要になります。亡くなった方の戸籍謄本や住民票には保存期間があり、この期間を超えてしまうと入手できなくなります。

戸籍謄本の保存期間は現在だと150年間ですが、平成22(2010)年6月1日以前のものは80年や100年であり、すでに取得できない場合があります。住民票(除票)の場合、住民基本台帳法の改正(令和元(2019)年6月20日施行)により、5年から150年間に延長されましたが、すでに保存期間を経過しているもの(平成26(2014)年3月31日以前に消除または改製したもの)については発行することはできません。

必要書類を入手できないとなると、別個の書類を入手したり、法務局と相談したりして手続きを行うことになりますが、相続登記に不慣れな一般人ではかなり手間と労力を要するでしょう。

相続登記をしないことで上記のようなデメリットがあります。なるべく早い段階で手続きを行うことをおすすめします。

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