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2021.11.30

相続トラブルの防止、自己の財産を最後までコントロールする手段として遺言書は有効です。ただ、法的に有効な方法作成をしなければ思い通りに財産を引き継がせられない可能性があります。

そして遺言書は作成方法によっていくつかに分類されますので、その種類を把握し、それぞれにつき特徴や有効に機能するための条件等を知っておくことが大切です。当記事では遺言書の種類を紹介していきますので、遺言書の作成を考えている方はぜひ参考にしてください。


普通方式遺言と特別方式遺言


まず、大別して「普通方式遺言」と「特別方式遺言」の2パターンに分けられます。

名称からイメージされる通り、普通方式遺言のほうが一般的に用いられる方式で、以下の3種類があります。

・自筆証書遺言

・公正証書遺言

・秘密証書遺言

 他方、特別方式遺言は特別な状況において認められる遺言書の方式で、大きく以下の2つに分けられます。

・危急時遺言

・隔絶地遺言

緊急事態向けの作成方法であり、この方式によって適切に遺言を残しても、その後遺言者が上の普通方式遺言を作成できるようになって6ヶ月間生存したときには、特別方式で作成した遺言書は無効となります。


【緊急時などに活用できる方式】

特別方式遺言の各類型はいずれもメジャーな作成方法ではありませんし、活用の機会がやってくることもめったにありません。そのため、こちらに関してはざっとまとめて紹介しいきます。

まずは危急時遺言についてですが、こちらは病気・怪我、遭難などといった事情によって死期が迫っている状況でのみ利用できる方式です。

病気などが原因で、自分で書くことができない状況も考えられますので、必ずしも自分で書き記す必要はありません。立ち合ってもらう証人に代筆してもらうことも可能です。記載した内容は本人および他の証人にも伝えられ、間違いがなければ証人らが署名押印して完成となります。なお、証人3人以上に立ち会ってもらう必要があります。

こちらは危急時遺言のうち「一般危急時遺言」と呼ばれるもので、これとは別の「難船危急時遺言」と呼ばれるものもあります。難船危急時遺言は飛行機や船に乗っている時の危難が想定されており、より緊急であることから一般危急時遺言よりも要件が緩和され、証人の数も2人で足ります。

続いて隔絶地遺言についてですが、こちらは社会と隔絶されていたり、海上にいるなど物理的に陸地から隔絶されていたりするケースで利用できる方式です。

例えば伝染病などに罹患し、隔離されている場合には、警察官1人と証人1人の立ち合いにより遺言書の作成を行うことができます。立会人全員の署名押印も必要であるなど、危急時遺言と似ている点も多くありますが、代筆ではなく本人が書き記すことが必要とされている点で異なっています。なお、隔絶されている原因は伝染病以外でもかまいません。何らかの理由で社会との交通ができない場合にはこの方式が活用し得ます。そのため「伝染病隔絶地遺言」と呼ばれたり、「一般隔絶地遺言」と呼ばれたりもします。

一方で、隔絶地遺言には「船舶隔絶地遺言」と呼ばれるものもあります。こちらは航海をしていることから陸地を離れており、通常の遺言書が作成できない状況で利用できる遺言方式です。作成にあたって警察官を呼ぶことが困難であるため、船長や事務員2人以上が証人として立ち会うことになります。やはり代筆などは不可とされ、本人による作成、署名押印などが必要である点も共通しています。


自筆証書遺言


ここからは普通方式遺言3種を紹介していきます。

まずは最もメジャーな方式である「自筆証書遺言」です。本人が自筆、作成するタイプで、作成にあたって本人以外が必要ありません。1人で作成でき、コストがかからないこと、誰にも知られることなく作成できるというメリットがあります。その反面、本人が遺言全文、日付、氏名を自書押印しなければならず、書式不備や紛失、偽造・変造などのリスクがあり、検認手続きも必要になります。

ただ、自筆証書遺言の場合には2020年から新たに「自筆証書遺言書保管制度」の運用が開始されており、紛失等への対応がしやすくなっています。

同制度は、自分で遺言書を作成後、法務局に保管をしてもらうというものです。中身の書き換えや紛失のほか、発見されないという事態を避けられます。さらに、中身の確認もしてくれるため遺言の有効性に不安があるという方にはおすすめできます。


公正証書遺言


「公正証書遺言」の場合、公証人に作成をしてもらいます。そこで、作成にあたっては遺言者本人に加え証人2人以上と公証人が必要になります。

手順としては、まず、本人が公証人に内容を口述し、公証人がその内容を筆記。そして読み聞かせます。その後本人と証人が承認し、署名押印。公証人も証明押印します。

公正証書遺言のメリットとしては、公証人が保管することによる紛失や偽造・変造のリスクが小さいこと、遺言の内容自体も明確となり証拠能力が高くなること、そして検認手続きが不要になることが挙げられます。他方、費用や手間がかかるというデメリットがあります。また、遺言の内容を秘密にはできないため、あまり内容を知られたくないという方には向いていません。


秘密証書遺言


「秘密証書遺言」は自筆証書遺言同様、本人が作成する遺言ですが、作成にあたっては公正証書遺言同様、2人以上の証人と公証人が必要です。ただ、記載内容、例えば誰にどれだけの財産を分けるのか、といったことに関与するわけではありません。遺言書の存在証明のために立ち合いをするのであり、その範囲でのみ関与をするのです。

作成手順としては、まず、本人が自分で作成した遺言書に署名押印します(他人が書いたものでも可)。そして本人がその証書を封じ、証書と同じ印鑑を用いて押印をします。その後公証人と証人に封書を提出し、申述。公証人が封筒に日付と申述事項を記載。最後に全員が署名押印して完成です。

ここからわかるように、内容に関しては確認が行われません。その意味で「秘密」が保たれるのです。そこでメリットとしては遺言の存在は明確にしつつも内容の秘密を保てるということ、また、自筆証書遺言とは違い他人が書いてもかまいませんし、ワープロを用いてかまわないということも挙げられます。

他方、検認手続きはやはり必要ですし、費用や手間はかかってしまいます。内容そのものの公証はされていないことから、相続開始後紛争が起きる可能性も否めないというデメリットも持ちます。

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