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2022.02.08

「親権」に関しては離婚問題の際、聞くことが多いかと思います。なんとなく、どのような権利なのかイメージできているかと思いますが、「監護権」との比較をする上ではなんとなくのイメージではなく、具体的に権利の内容を知っておくことが大切です。

そこでこの記事では、親権や監護権の意味、それぞれの違いについて解説していきます。


親権とは


「親権」とは、ただ単に親が子に対して行使し得る権利を指すものではありません。

民法第820条に規定されているように、「子の利益のため」に監護・教育をする権利を行使し、同時にその義務を負う法的地位であると考えられています。

第八百二十条 親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

引用:e-Gov法令検索

権利としての側面に着目する場合、身上監護権を包含する規定として、命名権や子の引渡し請求権、治療同意権の根拠規定になると解されています。ただ、別途根拠規定が設けられている「居所指定権」「懲戒権」「職業許可権」については包含されません。

親権者にこれだけ大きな権利が与えられているのは、それだけ子どもが社会的自立を果たすためには家族内のコミュニケーションや親密な養育関係が重視されているからです。学校等の教育も重要ですが、小さな子どもに対しては親の監護・教育機能の存在が相当に大きいのです。

よって、親権は、子どもが社会生活で自立できるようになるまでの監護および教育機能、そして社会化機能を担っているものと捉えられています。

しかしながら、現実には監護教育をする権利の濫用も生じており、虐待などが起こっているケースもあります。そこでこうした濫用等があったときには親権の喪失や停止といった処分も予定されています。


【親が離婚したときの親権】

民法では、未成年者に関して父母の親権に服するとの規定が置かれており、婚姻中は両親の共同によるとされています。

それでは、親が離婚をしているケースではどうなるのでしょうか。

この点、日本の法律では、一方のみが親権者になると規定されています。そのため、未成年者がいる状況で離婚をするには、離婚後の親権に関してどちらが有するのか決める必要があります。

離婚後も両親が共同で親権を行使し続けられないのです(なお、法務省が、離婚後も共同親権にするかどうかを選択できる制度の検討をしています)。


【親権に争いがある場合】

離婚時、どちらが親権を持つのか争いにならなければ特段問題になることはありません。

しかし、親権者の設定で話が決着しない場合には、いくつかの基準に照らし合わせながら決定されることになります。

主に以下の要素が考慮されます。

・母親による監護教育が特に重要な年齢かどうか

・子どもとの生活の継続性  子どもの意思

・兄弟姉妹の親権

母親のほうが親権を獲得しやすいと言われることも多いですが、ただそれだけで親権者になれるわけではありません。あくまで子どもの利益を考えた結果、母親との生活が必要と判断される場合に親権が渡るのです。乳幼児の場合にはその傾向が強くなりますが、母親が精神疾患を抱えているなど、その他の事情によっては十分覆る可能性があります。

子どもの意思に関しては、15歳以上かどうかが非常に重要です。15歳以上の場合には子どもの意見表面権が尊重されなければならず、子ども自身の判断が結果を左右することになるでしょう。15歳未満であっても、一般には10歳以上に達していれば意思が強く反映されます。

なお、親権の決定手続きは「親による協議」「調停」「裁判」の3段階があります。最終手段である裁判にまで到達すると、どちらかの希望通りにならなくても、強制的に一方が親権者となります。


監護権とは


ここまで親権に関して説明してきましたが、これと並んで「監護権」という言葉も耳にしたことがあるのではないでしょうか。

監護権は、親権と別物の権利ではありません。親権の具体的内容である「身上監護権」「財産管理権」のうち、身上監護権を指しています。監護の意味に関して厳格な定義がなされているわけではなく、身体上の監督保護に関する権利を広く指します。

むしろ監護権を理解する上では、“本来の親権から財産管理権を抜いた権利”であると捉えたほうがイメージはしやすいです。子どもと一緒に生活をする親が監護権者、他方の親が親権者となりますが、このときの親権は財産管理権しか含まれません。

どんな場合に監護権だけを別個に考えるのかというと、1つは親権者の設定に争いがあり、その妥協案としてそれぞれの権利を各々に分けるような状況です。親権本来の意義からすれば、子どもの利益にならないような行為はすべきではないのですが、過去には「健全な人格形成のために父母が十分に協力できるのなら、監護権を親権から分けることも適切な解決方法である」旨裁判所から示されています。

また、以下の場合でも監護者の指定が問題になり得ます。


・親権者が子どもの監護教育に関しては適していないと思われるケース

・監護者として問題ないが、財産管理ができないと思われるケース

・両親ともに監護教育が難しく、第三者を監護者に指定したいケース

 

親権と監護権の違い


最後に、親権と監護権の違いを整理しておきます。

まず、監護権は、親権の一部です。

親権には身上監護権(監護権)と財産管理権とがあり、監護権は子どもと一緒に生活をして日常生活の世話や教育などを行う権利などを指します。他方、財産管理権は財産に関して法律行為を子どもの代わりに行い、財産を管理していく権利を指します。

権利の性質上、上の2種類を親権の具体的内容としていますが、基本的にはこれを分離すべきではありません。むやみにこれを分けてしまうと子どもの利益を害するリスクが高まってしまうからです。

しかし、例外的に分離することもあり、その場合の親権は実質的に財産管理権です。監護権と違って、“親権であるにもかかわらず生活の世話等をする権利がない”という違いが出てきます。

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