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2022.07.04

相続人が複数いる場合、相続財産を協議により分割していくこととなります。例えば被相続人の子4人だけが相続人であって、相続財産が現金1,000万円だけだとすれば、1人あたり250万円に分けることで簡単に平等な分配が実現されます。

しかし相続財産に不動産が含まれている場合、そう簡単にはいきません。そこでこの記事では共同相続人がいる場合の不動産相続について、特にその分け方に関して解説していきます。


相続方法1:現物分割


・現物分割の概要:相続人の1人が単独で取得

・現物分割のメリット:権利関係が明瞭になる、自宅を残せる

・現物分割のデメリット:財産の価値にばらつきがあり、法定相続分に分けるのが困難


「現物分割」とは、遺産をそのままの形で共同相続人に分ける分割方法です。

土地が対象とされる場合であれば、分筆して各相続人に分けていきます。比較的単純な分け方であり、遺産分割における原始的手法と考えられています。

権利関係が明瞭になることから、物件の運用に関して将来的な相続人間でのトラブルも起こりにくいです。また、自宅を残すことができるという利点もあります。

しかしながら、価額を平等にすることが難しく、法定相続分できれいに分けられません。その意味で分割時に相続人間でトラブルが生じる可能性はあります。


相続方法2:代償分割


・代償分割の概要:相続人の1人が単独取得し、他の相続人は単独取得した者に相応の金銭を請求する

・代償分割のメリット:物件はそのままに、不平等の解消ができる

・代償分割のデメリット:代償金を支払う相続人に現金の負担がかかる


「代償分割」は、遺産の全部または一部を共同相続人の一部が現物で取得し、その取得した人物が他の相続人に対して代償金を支払う分割方法です。

物件をそのまま残すことができ、現物分割で生じ得る相続人間での不平等を「代償金の支払い」という形で解消することもできます。

しかしこの手法は常に採用し得るものではありません。なぜなら物件を取得した人物が金銭の負担を負うこととなり、支払いに応じるのが難しいケースがあるからです。

物件に加え現金等も取得している、あるいはもともと大きな資力を持っていた相続人なのであれば採用し得るでしょう。

こうした問題があることから、裁判所による審判分割においても「特別の事情があると認めるときに代償分割とすることができる」と規定されています。つまり、審判をもってしても特別の事情がなければ原則として特定の相続人に代償金としての債務を負わせることはできないのです。

なお、「特別の事情」が認められるには、①現物分割が相当でない、②不動産を取得する相続人に支払能力がある、の2点が認められる必要があります。

また、以下のポイントも押さえておくと良いです。


・審判による代償分割金では即時の支払いが原則

 ただし代償金額や当事者の利益、支払期間などの事情を考慮して分割払いを命ずることも可能

・代償金は他の相続人に対する債権と相殺できない

・代償金の支払いがない場合でも債務不履行を理由に遺産分割協議の解除はできない


【相続税の計算には代償金も含める】

現物分割であれば相続税課税の問題もシンプルになります。これに対し代償分割により相続財産が分割された場合はどうなるのでしょうか。

立場に応じて課税のされ方が変わるため注意が必要です。

例えば代償金を支払った者であれば「取得した現物の価額から代償金の価額を控除」されます。

これに対し代償金を受け取る側としては「代償金を加算」して相続税の課税価格を算出することとなります。


相続方法3:換価分割


・換価分割の概要:不動産を売却することで得た金銭を分ける

・換価分割のメリット:公平な分配ができる

・換価分割のデメリット:売却に時間・手間・費用がかかる


「換価分割」とは、遺産をそのまま分割の対象とはせずに、売却してその対価である金銭を共同相続人間で分割する方法のことです。

金銭に形を変えることで公平な分配が可能となる一方、売却をするのに時間がかかりますし、そのための手間と費用も発生してしまうという難点があります。

なお、審判分割で換価分割をするには「必要があると認めるとき」に命ずることができると規定されています。例えば現物分割が困難であって、現物分割をすると価値を下げてしまうケースなどで必要性が認められると考えられています。


【相続税の計算は換価前の財産で考える】

換価分割がされたときにも、相続税の計算上、注意が必要です。

換価分割が実施された場合は、換価により分配された金額をもとに課税価格を計算するのではなく「相続開始時における、換価財産の相続税評価額」をもとに計算します。

この相続税評価額に、換価代金の取得割合を乗じて個別の額が算出されます。


相続方法4:共有分割


・共有分割の概要:単一の不動産につき相続人で共有する

・共有分割のメリット:法定相続分通りに分けることができる

・共有分割のデメリット:売却や使用にあたり権利関係が複雑化する


「共有分割」とは、ある不動産につき相続人各々の持分を定め、共有という形で分割する方法を指します。

持分を調整することで公平に分割することができますが、将来的に売却をしたくなった場面などで揉める可能性があります。

また、共有者である相続人が亡くなったときにさらに共有者が増えてしまうという問題も抱えています。そのため特段の事情がなければ共有分割は避けた方が無難と言えるでしょう。


【共有状態を解消する方法】

一度共有状態になってしまったとしても、「共有物分割の手続」を採ることで解消することができます。

共有物分割の手法として、以下4つが挙げられます。


①共有地の分割:共有持分の割合に応じて土地を分割する手法

②持分の放棄:持分を放棄して他の共有者に所有権を帰属させる手法

 ※共有者が死亡して相続人がいないときにも同じ効果が生じる

 ※課税の観点からは、このとき贈与または遺贈により取得したものと扱われる

③価格賠償による分割:他の共有者が持分に相当する金銭を支払って買い取る手法

④換価分割:目的物を売却し、その代金を持分に応じて分配する手法


相続方法の決め方


分割の方法については上で説明した通りですが、その方法の決め方についても知っておく必要があります。

当然ながら一部の相続人が勝手に「この土地は、○○分割によって分ける」と決めることはできません。

そこでまずは遺言により分割指定がされていないか、確認しましょう。次に、遺言書が作成されていない場合は、遺産分割協議により定めていきます。

しかしながら、協議ができる状況にない、あるいは話し合いがまとまらない、といったシチュエーションも考えられます。その場合には家庭裁判所に調停分割の申立を行いましょう。

調停とは裁判所による任意的紛争解決手続のことで、遺産分割以外でも広く使われている手続です。裁判所の関与は受けるものの、最終的に当事者の合意が必要である点は純粋な当事者間での協議と違いはありません。

なお、当事者間での協議や調停であれば、現物分割・代償分割・換価分割・共有分割のいずれの方法も選択することができます。

他方、審判による場合はまず現物分割から検討されます。次点で代償分割、そして換価分割、共有分割の順番で検討が進んでいきます。

「どの方法で分割をすべきかわからない」「できるだけ迅速に、相続人間の話し合いだけで解決をしたい」とお考えの場合は専門家に相談してみましょう。

 


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