豊島区南大塚にある【東京あかつき法律事務所】お気軽にご相談ください。

CONTENTS

記事一覧

2023.05.02

遺言書を作成した後は、相続が開始されるまで大事に遺言書を保管していなければなりません。保管方法は作成した遺言書の種類に応じて異なり、保管方法によって相続開始までのリスクの大きさも変わってきます。

具体的にどのようなリスクが生じるのでしょうか。ここでどの問題点を挙げるとともに、リスクをなくすための保管方法などを紹介していきます。


遺言書作成後のリスクとは


遺言書は、遺産の行方を左右する書面であり、これが作成されているかどうかは相続人等の経済状況にも大きな影響を与える可能性があります。

そのため、遺言書をせっかく作成してもきちんと保管がされておらず遺言書を紛失してしまうと、遺言者が望む通りに財産を渡すことはできなくなってしまいます。

また、相続人でない者に関しては遺言書を使った遺贈がされなければ遺産を受け取る権利を得られません。

そのため遺贈を指定した遺言書がなくなってしまうと遺産に対する一切の権利を失ってしまいます。

作成後の遺言書に関して起こるリスクはこれだけではありません。何者かによって改ざんをされてしまう可能性もあります。

遺言書の記載に従うと、本来受け取れるはずの法定相続分より小さい額でしか財産が受け取れない方も出てきます。ある相続人の取る分が減ることにより、当該相続人からの債権回収を狙っている債権者も満足に請求ができなくなる可能性があります。

このような利害関係を持つ者が、中身を書き換えてしまったりわざと消失させてしまったりするリスクもあるのです。

そのため遺言者は誰でも手に取れるような場所に作成した遺言書を保管するのではなく、金庫など厳重に管理された場所に置いておくよう工夫する必要があります。


遺言書の保管方法


代表的な、よくある遺言書の保管方法とそれぞれの特徴を紹介していきます。


【自宅での保管】

自筆証書遺言や秘密証書遺言は、遺言者自らが遺言書を保管しなければなりません。多くの遺言書は自筆証書遺言として作成されていますし、「自宅で保管をする」という方が多いのではないでしょうか。

この場合、内容の修正がしたいときもすぐに対応できます。保管に費用がかからないのもメリットです。

他方で、紛失や改ざんなどのリスクにさらされるというデメリットがあります。

特に親族間の仲が良くない場合や、遺言書の存在とその中身が家族に知られている場合には要注意です。


【信頼できる人物に預ける】

自分以外の、誰か信頼できる人物に遺言書を預けることも可能です。

家族や友人などであれば保管費用もかけずに保管してもらえるかと思われます。

この場合、預けた人物が約束に従い適切に保管をしてくれる場合には多くの問題を防ぐことができるでしょう。何者かに改ざんされたりなくされたりするリスクも減らせます。

ただ、その預けた人物が改ざんなどをしてしまう可能性もゼロではないため、完全にリスクをなくせるとまではいえません。

その一方で、弁護士などの専門家に預けることでこういったリスクを最小限にとどめることは可能です。専門家に依頼することになるため費用はかかりますが、専門家自身が遺言書の内容に直接利害関係を持つわけではありませんし、通常、紛失・改ざんなどの心配をする必要はありません。

また、遺言書作成から相談ができるなどのメリットも得られます。


【公証役場での保管】

公正証書遺言の場合、保管に関して遺言者が悩む必要はありません。公証人が作成をした“公文書”として公証役場に原本が保管されるためです。

この場合も費用がかかるなどのデメリットはありますが、原本の紛失や改ざんの問題を限りなくゼロにすることができるというメリットがあります。

相続開始後の「検認」と呼ばれる手続も必要ありません。

自筆証書遺言などでは、まず遺言書を家庭裁判所に持っていき、検認手続として現在の状態を確認する作業をしなければなりません。

相続開始後の忙しい中、この手続の対応をしなければならないのです。公証役場で保管してもらっていた場合にはこれが不要となります。


【法務局での保管】

自筆証書遺言でも安全に保管をしてもらうための制度が近年設けられました。

この「自筆証書遺言保管制度」を利用すれば、所定の手続を行うことで、法務局で遺言書を保管してもらうことができます。

やはり手数料がかかるという面がデメリットにはなりますが、公正証書として作成しなかった場合でも公正証書遺言同等の水準で保管をしてもらえるという利点があります。

また、同制度による保管の場合でも、相続開始後の検認手続は不要となります。


法務局で保管してもらうための手続の流れ


最後に、自筆証書遺言保管制度により法務局で遺言書を保管してもらうための手続について簡単に紹介しておきます。

基本的な流れは次の通りです。


①遺言書を作成する

②保管をしてもらう場所を決める

 ※遺言者の住所地や本籍地、所有している不動産の所在地を管轄とする遺言書保管所から選ぶことができる

③保管申請書を作成する

④遺言書保管書で予約をする

 ※事前予約が必要

⑤遺言書保管書にて保管申請を行う

 ※添付書類として住民票の写し、顔写真付きの身分証明書などが求められる

 ※手数料も1通あたり3,900円が必要

⑥遺言書の提出と保管証を受け取る

 ※保管を依頼した遺言書を特定するために必要な番号が記された保管証が発行される

 ※保管証は再発行ができないため要注意

 

同制度により保管してもらう場合でも、遺言書の有効性までが担保されるわけではありません。そのため遺言書作成を適切に行うことに対する重要性は変わりありません。専門家にチェックしてもらいつつ、慎重に遺言書を作成する必要があります。

一覧へ戻る
このページの先頭へ